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型紙彫刻師金子一昭さん

東京下町の工房は、

様々な生地と型紙が生まれる場所。

そこにはひっそりと

昔からの技術と現代のものづくりが

息づいています。

夏の浴衣を華やかに飾る絵柄。

それを描き出す繊細な型紙には

匠のアイディアと心意気がこもっていました。

今回は型紙で様々な柄を彫り上げる

「現代の型紙彫刻師」

金子一昭さんにインタビューをしました。

【経歴】

新潟県出身。
大学文学部卒業後きものの世界へ。
東京の江戸更紗染色工場にて12年間修業を積む。

2006年独立。
型紙彫刻師の仕事と並行して、きもののネットショップ「キモノスイッチ」を立ち上げる。

伝統文化+クリエイティビティを、きものというメディアを通して発信中。

◆キモノスイッチ◆ http://kimonoswitch.com/

 

 

現代に生きる「型紙彫刻師」

前回取材させていただいた芝崎さんと同じ工房で、「型紙彫刻師」として活躍されている金子さん。同時にきものネットショップ「キモノスイッチ」も運営されています。現在に至る経緯とは?

金子さん:はじめはそんなに着物の産業には興味なかったんです。染色に関わるようになったのは知人の紹介で、いきなり東京の江戸更紗染色工場に連れて行かれたんですよ。それほど染色の知識もなく始めたんですけど非常におもしろかったので、そこから着物の世界に入りました。

 そこでは12年ほど働いていました。ただ、そこでやっていた染色は伝統工芸といわれているような古い分野でした。そして自分には、このまま伝統を守っていくというよりは、それを「今」のニーズに生かしていく何かをやりたかったんですよね。それでそこを辞めて、試行錯誤しながら色々な作家の方が開く展示会を見て回りました。そこで芝崎さんと知り合って、独立した活動が始まったという感じです。

「型彫り」というお仕事がどのような流れで進んでいくのか教えてください。

まずは仕事を請けて、芝崎さんのデザインを原寸大の白黒の図案で受け取ります。それを型紙の上にのせて小刀で彫っていく。図案によってはそのまま彫っていくと、細かすぎたり線の幅が狭すぎて上手く染まらないことがあるので、修正を加えながらまずは彫る。仕上げは細かい紗(薄く透き通るように織られた絹織物)を補強に張ります。

金子さんにとって「型紙」を使った独特な染色方法の面白さとは?

”リピートしていく面白さ”

染色といっても筆を使ったり絞ったりいろいろありますよね。型紙を使う方法だと、浴衣・半纏・手ぬぐいなどをその型紙でなんでも染められます。その「リピートしていく面白さ」。型紙は自分で彫っていくのですが、彫ること自体よりも「柄を使いこなす」ことが大切なんだと思います。はじめは古典柄を参考に、今度は自分たちで新しい柄をおこして、柄を組み合わせて・・・そんな工夫ができるのも面白いところだと思っています。

「型彫り」「染色」という伝統文化に対する思い

型彫りというものづくりのお仕事の魅力、そしてやりがいを感じる瞬間を教えてください。

「手仕事だからこそ、向上していくことができる」

毎回、同じ模様でも結果が違うので、向上する余地があるということが手仕事の面白さだと思います。機械ではないので、どんなにうまくなっていっても手仕事の「痕跡」は残ります。その完璧を目指して頑張っていくのが魅力です。

なので、その物が自分の納得いくものになったときはうれしいですね。そしてそれをお客さんに喜んでもらったときがうれしい瞬間です。この両方がちょうど上手くいったら最高だと思います。

*実際の型彫りの様子

[RumiRockゆかた 回転木馬]

伝統を受け継ぐという意味の強いお仕事ですが、その中で大切にしたいことはありますか?

「伝統はコピーでは伝わらない。新しい何かをもう一味」

前に映画で役者さんが歌舞伎についてお話されているのを見たことがあるんですが、そこでも言われていたのが「伝統はコピーでは伝わらない」ということなんです。

昔の技術をそのまま保つことも重要だと思います。でも、伝統はそこに新しいこと、遊び心、さらなる進化を一味加えていくうちに自然に伝わるものなのだとおもいます。それをいつも意識するようにしています。

金子さんが考える日本の魅力。

伝統を新しい形で表現するクリエーターから見る日本の魅力は何ですか?

「オタク的な技術追求と、それを理解する人がいること」

電化製品など細かい技術が日本はとにかくレベルが高いですよね。私の仕事でも、細かい彫り柄を突き詰める職人がいます。そしてそれを「いい」と理解する人がいる。オタク的な興味がある人が「この一寸の間には何個の柄が入っている」というようなスペックで語って、こだわる人が昔からずっといてその技術が今に引き継がれているんですよね。そして、選ぶ人も肌触り・風合いにこだわる。それが日本の魅力であり、日本人らしさだと思います。

「型紙彫刻師」というお仕事を通じて、これからの日本に必要だと感じるものとは?

それは「伝える技術」

職業柄というのもあると思いますが、営業だと思います。伝える力だと思います。

今まで着物について言えば、基本的に国内販売向けにしっかりと作っていれば「すごい」と言って買ってくれる人がいて、売れる時代だった。なので、作る側も売るために何かを伝えることは特別してこなかったんです。でもこれからは、自分の考えや作った側の思いを「伝える技術」が重要だと思います。職人の方は発信することが苦手な方もいると思うので、作る人とデザインする人の他に外に発信する人が必要だと思います。着物に限らず、これから世界に日本を発信しくときも「伝える技術」は必要なのかなと思います。

自分の10年後、日本の10年後。

今のお仕事をこれからも続けられていったとき、5年後・10年後にご自身はどうなっていたいと思いますか?

「誰かのテンションを上げられる作品を作りたい」

今、型紙彫刻師は東京だと10人いるかどうかと言われているくらい少ないので、まずは今の仕事を「続けていきたい」。

あとは、「買えないけどすごく欲しい!」ってテンションを上げられるようなものを作れるようになりたいと思います。例えば、男の子で言えばスポーツカーのような存在感。買うことが難しくても、いいな、欲しいなって思えるものをつくれたらいいですね。もちろん買える人にはぜひ買って楽しんでいただきたいです。

10年後の日本の未来はどうなっているとおもいますか?

“超ハイテクな昔の生活”の中で残したい「ものづくりの気合」

最近いろいろなことがあって、将来がちょっと不安になるようなことがありますよね。かといって昔に戻ればいいのかっていうとさすがに難しいとおもいます。なのでハイテク技術を使って昔の生活をする。「農家で採れた野菜をネットで売る」みたいに「やり方を変える」「ハイテクAlways」みたいな未来はおもしろいなと思います。

そしてどんなにハイテクになっても、こだわりを持っていい物を作ろうとする「ものづくりの気合い」は残しておきたいと思いますね。

学生へのメッセージ

最後に学生に向けて一言お願いします。

「一度は社会に出てみて欲しい」

自分自身、大学を出て回りの流れに乗るのが嫌で就職はしませんでした。就職をしない道を選んで、悪くはなかったし結果的には就職しなかったことでこの道に出会えたのですが・・・

もし、今道を決めている人がいたらそのまま進んでいいと思いますし、すごくうらやましいですね。大学を出たら起業するとか、しばらくバイトして好きなことをするとか。でも、悩んでいる人やなんとなくものづくりをやりたいと思っている人は、一度社会に出てみるのがいいと思います。

合わない仕事でもしてみたほうがいいと思います。社会でしか得られないものもありますしね。

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