ここが足りない!日本のクリエイティブに欠けている”グローバルさ”

先日、渋谷ヒカリエのホールにてmy Japan Award 2016 FINALを開催しました!

(今年のmy Japan Award受賞作まとめ→my Japan Awardついに終幕!

300名以上の方がお越しくださり、会場は満席となりました。ファイナルイベントに足を運んでくだっさった方々、本当にありがとうございました!

そしてファイナルイベントでは、受賞作品発表の他にもmy Japan Awardの審査員方をゲストにお迎えしトークショーを開催しました。
今回のブログでは、木村健太郎さんによるトークセッションの様子を書き起こしていきます!

◯中島信也さんのトークセッションの様子はこちら→今の日本のクリエイティブ業界では必要不可欠!”喜んでもらイズム”とは?

 

木村健太郎さんにお話いただいたトークテーマは、世界から見た日本のクリエイティブ』。海外の様々な広告を例に出し、日本のクリエイティブを客観的に説明してくださいました!


 

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河尻:さっきの信也さんのトークセッションで「クリエイティブは世界と繋がってる」っていう話が出てきたんでね、じゃあ世界に通用するクリエイティブってどんなんだろう?っていうことで、健太郎さんに話を聞いてみたいと思います。

 

木村:最近、「日本のクリエイティブとグローバルのクリエイティブってどう違うの?」って質問をよくされるんですよ。でもね、この質問ってちょっと違うんじゃないかなと思っていて。
日本のクリエイティブとグローバルのクリエイティブって案外違わないんですよ。
話題の範囲が違うっていうだけで、海外向けのものだから外人ウケしなきゃいけないとか、逆に日本人には日本のことをアピールしなきゃいけないとか、そういうことは全くないんです。

例えば「そういえば中島くん、昨日食った辛子れんこんが美味しくてね」とか言っても、この話題は二人にしか分かんないじゃないですか。

 

河尻:さっきの動画のね (笑)。

 

木村:だけど「逃げ恥(TBSで現在放送中の火曜ドラマ『逃げるは恥だが役にたつ』)の最終回ってどうなるか知ってる?」って聞かれたら、大体の日本人が盛り上がりますよね。ちょっと範囲が広くなるわけです。でもそれって、アメリカ人とか中国人が聞いたら何のこっちゃわかんないわけで。

だけどこの間、シンガポールでピコ太郎のネタを使ってセミナーをやったんですよ。「I have a innovation, I have a tradition…」とかやったらね、バカうけしたんですよ (笑)。PPAPは完全にグローバルなんです。

なんで、世界中の人にとって”すべらない話”を考えればいいんです。こういうのってどんなのなんですかね。ちょっと一本見てみましょうか。

 

 

河尻:これ面白いね (笑)。

 

木村:ESPNのスポーツチャンネルの広告です。もちろんマイケル・ジョーダンって世界中の人が知ってるから、これ見て笑えるってのもあるんだけど、「本人じゃないのに有名人と同性同名だなんて悲しいよね」っていう、絶対に世界ですべらない話題になってるんです。

スポーツチャンネル自体はアメリカのもので別にグローバルでは流れてないかもしれないけど、このCMってすごいグローバルだと思うんですよね。

こういうのがマス広告なんですよ。今は色んなメディアができたし、格差が生まれたりとか、それぞれ色んなライフスタイルがあって、だけど皆んなが共通して話せる話題とか、感動できることこそがマス広告だと思うんです。今マス広告の存在意義が下がってるって言うけど全然そんなことはなくて。共感できるものは、例え周りの人皆んなが興味なくても有名にできちゃったりするんですよ。

 

河尻:なるほど。

 

木村:もし「トラックの最新技術について興味ある?」って突然言われても、普通に興味ないじゃないですか。でもそれを皆んなが共感できる話にすると、意外と興味を持ってくれるんですよね。ちょっとこれを見てみてください。

 

 

木村:地球で一番危険なドライバーにトラックを運転させるっていうね (笑) 。トラックの実証実験映像って普通にあるじゃないですか、だから皆んなトラックになんて興味ないし正直言ってつまんないけれど、でもこうしてみると面白くなる、というわけなんですよね。

今日のお題は『世界から見た日本のクリエイティブとは』ってことだったんですけれど、実は日本とか世界とかあんま関係ないんですよ。みんな日本って特殊な国だと思って日本らしさを発信しようとするんだけど、それって皆んなが共通して盛り上がれるネタのうちの一つでしかなくて。だから「日本はこんなに違うんだ!」っていう風に一生懸命アピールをしなくても、世界中の人が共感できるものを見つけてやった方が良いかなと思いますね。

 

河尻:うんうん。

 

木村:大事なことは、見た人に喜んでもらうこと。それが、より多くの人だと良いなということに尽きると思います。

今度はオリンピックなんですけれど、東京、日本っていうことを伝えなきゃいけない。でもオリンピックを通じてどんなにポジティブな気持ちになるかっていうのが大事だと思っていて。ロンドンのパラリンピックのCMをちょっと見てほしいと思います。

 

 

木村:これは、オリンピックよりもパラリンピックの方が見る人が少ないから、もっとパラリンピックを見ようよっていう広告なんだけど、パラリンピックって健常者よりもちょっとハンデがある人のための競技だと思ってる人が多いじゃないですか。でもそうじゃないんだと。健常者よりもハードな環境で生きてるんだから、superhuman、つまり「超人」なんだと。健常者よりすごいんだぞっていう風に、考え方をひっくり返したんですよ。

これってやっぱすごくて、多くの人に影響を与えてるというか、もっと言うと障害を持ってる人全体に影響を与えてるかもしれないし、偏見とか差別とかっていうことに対してすごくポジティブな影響を与えてると思うんですね。

 

河尻:うん。

 

木村:こういうグローバルに共通する社会問題についてね、2年前にカンヌのチタニウムライオンっていう部門を審査した時に徹底的に話し合ったんですよ。ソーシャルグッド的な話ね。グローバルに、皆んなが取り囲まなきゃいけない問題って何だろうって皆んなで議論して、結果5つに絞ったんです。テロ・犯罪・戦争と、貧困格差、病気・障害、偏見・人権差別、そして環境だったんですけどね。

別にそういうものをテーマにしなきゃいけないわけじゃないんだけど、Superhumanっていうパワリンピックのやつでは、ただパラリンピックのことを宣伝するだけじゃなくて、みんなが問題だなって思ってることにちょっと入ってる。だから強いんですよ。社会課題をやれって言ってるんじゃないんだけど、こういうグローバルなインパクトを狙っていくっていうのはすごく大事だと思います。

 

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木村:キース山下っていう人がいて、昔スティーブジョブスのスピーチライターをしてた人なんですけど、その人の話を聞いていたら『10億人にインパクト与える仕事しようぜ』って言われたんです。これ別に10億人にリーチするってことじゃなくて、象徴的になんですけど、でもさっきの広告ってきっと10億人ぐらいの人が喜ぶと思うんですよね。やっぱりそういうインペクトを目指さなきゃなって思っていて。

海外の審査をしていて日本の作品で思うのは、ここがすごくちっちゃいんですよね。
日本人の◯◯離れとか、日本人はシャイだからとか、日本にはそういう問題はいっぱいあるんだけど、でもそれって何千万人っていう規模の話で。こういうちっちゃいテーマはね、もうちょっと皆んなが興味の湧くような大きなテーマを通してやってみた方がいいんじゃないかな。

あとは、パラリンピックのやつだとちゃんと課題が解決してるんだよね。だから日本は課題先進国って言うけど、あんま「課題解決先進国」にはなってないんですよ。やっぱそういうとこまでなんなきゃなって思いますね。

ちょっとトヨタのCMを見てもらいましょうか。これは「Safty Sense」っていうトヨタの機能で、目に見えないところで作動してるところがお父さんの娘に対する愛情と似てるんじゃないかっていうことで作ってみたんですよね。是非父の日にはお父さんに感謝してほしいなと。

じゃあちょっと見てみてください。

 

 

木村:このCMは650万人くらいが見てくれて、そのうちの半分以上が外国の人ですごく良いフィードバックをもらっているんです。これはやっぱり普遍的なところを突いて、大っきなテーマをしっかり押さえられたと思うんですよね。

 

河尻:まさにグローバルな部分を捕まえていますよね、違いではなくて。まあ誰でもお父さんと娘さんの関係性で、色んなことがありますよと。

 

木村:はい。こういうのに共感するお父さんってたぶん世界に10億人くらいいるんじゃないかな。

でも、みんなが面白いと思う共感できるテーマとか、みんなが問題だなと思う社会問題とか、そういうのをつきつめていくと今度は「言葉」っていうのが壁になるんですよ。そこを越えて、言葉がなくても全然大丈夫なクリエイティブってのが究極のグローバルですよね。

じゃあ、最後にね、最近ローンチしたフィルムを紹介したいのですが、数年前に「LOVE DISTANCEでカンヌで金を受賞した相模ゴムさんの新作です。ケトルの大木くんと田中耕一郎さんが作ったので、それを見ていただきたいと思います。

 

河尻:このCMの場合は、求愛っていう、人間なら誰でも、まあ動物でも誰でもなんですけど、そういうのがテーマになっていますよね。

でも、人間違うところって目につきやすいけど、似たところって目につきにくいんですよ。きっとそれを捕まえるのって難しいと思うんですよね。

じゃあその皆んなが共感できる部分を捕まえるコツっていうのが何かあるのかっていうことと、もう一つそれに補足で、健太郎さんが同じものを捕まえたあとに、それを「共感」とかに言い換えてるじゃないですか、「喜んでもらイズム」方向に。その二つを健太郎さんなりのやり方でいいので、何かあったら是非聞いてくださってる方にシェアしたいなと。

 

木村:どっちでも同じ答えで良いと思うんですけど、僕はよく人間の「本性」っていうことを言っていますね。世界中全体に、人間には共通する「本性」っていうのがあるんですよ。

例えば、僕は若い頃に口紅の仕事とかしてたんですけれど、どんなに一生懸命毎晩口紅を塗っても、やっぱり落ちない口紅と、ぷるるん口紅と、天然口紅と、どれが良いかってわかんないんですよね。男なんで。

自分とは違う属性の人たちが相手だと、なんかデータとか見て頑張って分析して、わかったように決めつけてやっても大体失敗するんです。だけどその人も僕も、両方持っている共通点って絶対あるはずなんですよ。人間の本性がね。

例えば自分の得意分野では人に負けたくないかもしれないし、目の前で困っている人がいたら取り敢えず手を差しのばしたくなるかもしれない。そういうところは絶対あって、そういうところまで遡っていって、「その人の気持ちがちゃんとわかる」っていうことまでいって、初めてディレクションするんですよ。

 

河尻:なるほど。

 

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木村:本性が言語化できるところまで考え尽くす。そうすると大体世界中の人でも企画を説明するとなんとなくわかってくれるし、クライアントもわかってくれるし、「そういうことなら他の国の人もわかってくれるねって」ってなるんですよ。最初に言ったんですけれど、やっぱマス広告ってそういうところが大事だと思うんですよね。

でも段々みんなが共通する気持ちっていう大きなところを捕まえるのは難しくなっていて、それだからこそ今こういうのが必要になっていると思うんですけど、テレビ広告もそうだし、Youtube広告だってね、ほっとけば国境越えてっちゃうじゃないですか。

そうすると同じところ、同じ本性で繋がらないとやっぱり良くないんだよね。そうしないと、例えばこの国の人にとってはすごいポジティブなメッセージだけど、この国の人にとってはものすごいネガティブな意味になっちゃったりすることもある。そういうのを防ぐためにも、一番上の大きなテーマのところをちゃんと捉えるっていうことに尽きると思います。

 

河尻:はい、わかりました。ありがとうございました!

 

木村:ありがとうございました!


今回のブログでは、木村健太郎さんによるトークセッションをご紹介しました!

 

海外でもご活躍される木村さんだから言える、”海外の人にも伝わる”クリエイティブの在り方について教えていただくことができました。

東京オリンピックも近づき、これからは海外の視聴者にも響くようなクリエイティブが必要になってくると感じられましたね。

 

次のブログでは、黒田秀樹さん・河尻亨一さん・中島信也さんによるトークセッションの様子を書き起こします。お楽しみに!

 

text:菅原あかり

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