5月26日(火)に開催したmy Japan Award 2015 キックオフイベントのトークセッションをほぼ書き起こしでお届け!【2】
Part1はこちらからどうぞ。
ゲストはmyJapanAwardの審査員でおなじみ、東北新社 中島信也さん、PARTY 伊藤直樹さん、銀河ライター 河尻亨一さんです。
ここでは、今年のmy Japan Awardのテーマの4つの要素の切り口などについてお送りします。
◯「クリエイティブが痩せてきてるなっていう感じがある」
河尻:このお題いかがですか。信也さん、伊藤さんに聞いてみたいんですけど。「Locul Culture」・・・。まあ例えば、信也さんも今やFacebook化を果たされまして・・・。
中島:つい、4月から。
河尻:4月からですか。盛んにブイブイFacebook街道を飛ばしている様子を見ているんですけれど(笑)例えばこの間もね、博多、めちゃめちゃ博多がお好きじゃないですか。
中島:いやいやそんなこと、仕事で行ってるわけですから(笑)遊びに行ってるわけじゃなくて。
河尻:でも、博多愛をこうね、「博多を去らねばいけない辛さ」みたいのを写真付きで(笑)
中島:そそ、日帰りでキツイんですよあれ。行って、テレビ局入って、なんにも食べずに帰ってくるから、ラーメン一杯も食べれないんでね、大変なんですけれどもね。
河尻:そう、だから具体的なそういう場所から始まったほうが、その後も深めやすいんじゃないかなっていう風にも思うんですけども。
中島:そうですよね。ひとつね、やっぱり僕なんかが大好きだった「あまちゃん」っていうドラマがありますよね。「あまちゃん」ってのは僕はひとつの”地元愛”っていうもののね、あれは「地元ってこんなに大事だったんだ」って思って、「僕に地元ってあんのかな」って(自問して)。僕福岡で生まれて、大阪で育って、東京に住んでもう30年以上ですから、チャキチャキの江戸っ子なんですけれども。「一体なにが自分の地元だろう」と思うと結構、地元の居酒屋とかはひとつの”地元”なんですよ。
で、息子とかいるから、息子とかがそこの居酒屋に行ったりするともうおんなじ小学校の子達が飲みに来てたりする年ですからね。(子達)というかもうおっさん、小学校の時おんなじだったやつがもう結婚の2次会に来たりとかする世界なんですけども。「あ、地元っていいな」って思ったのが僕あのドラマやったと思うんですよね。だから”ローカル”ってまず、「自分の地元ってなんだろな」ってのはひとつあると。
東京の人はもう全然ローカルじゃないよって(思うかもしれないけど)、さっき(myJapan新代表の)束さんが言ってたけども、スクランブルの交差点で、生まれた人はあんまりいないと思うけどね(笑)どこでもいい、全然地味なんですようちは。練馬で、僕(住んでるの)練馬なんですけど、なんかあったりするところがひとつの発見だと思うし。
僕なんかもご縁のある土地として、金沢は20年くらい、金沢市のイベントで行ってまして。すごく自分としても愛着のある都市、町になっててね、あそこも「あ、こういうことって意外と知らないな」っていうことがあったりもするし。僕一番びっくりしたんがね、去年の秋に初めて愛媛県行ったんですよ。行ったことある?
伊藤:あります。
中島:あそこってさ、大体みんなね、ポンジュースしか思いつかないんですよ(笑)
伊藤:(笑)
中島:意外と、愛媛県てすごくて。キウイの生産量が日本一なんですね。まあ(全国で作られてる量が)少ないと思うけど(笑)作ってないんだと思うんですよ。あと、鯛ね。養殖の鯛のブランド鯛とか天然の鯛。瀬戸内の魚ってめちゃめちゃ寿司がうまい!金沢が一等賞かなーっと思ったけど結構これヤバいぞと、いうぐらい寿司がおいしいのと。
あと道後温泉っていうのがあるんですけども、道後温泉ってのは銭湯の名前だっていうのを行って初めてわかってん。道後温泉って温泉郷じゃないんだよ。
河尻:あ、そうなんですか。
中島:一個の建物の名前なんです、道後温泉ってのは。ほんで、周りにホテルがいっぱいあって、みんな道後温泉に入りに行くねん。
河尻:その銭湯に。
中島:銭湯に。「なになに湯」やねんあれ。
河尻:へえ〜。
中島:とか、あとは・・・県民に対するホステスさんの数が日本一おる。とかね、全然発信してないんですよ(笑)これ面白いやんと。すごい面白いこといっぱいあるやんっていうのを、意外とね、「いや、いいですウチは。これでもう間に合ってますから」みたいな人がいるんやけども。
1500万人、日本に来るっていう世界になってきた時に、もっともっと発表していくっていうことが、僕はなにも宣伝して来てもらうためということだけじゃなくて、お互いの理解を深めるためになっていくんじゃないかと。文化的なね、知らない国との交流を深めていく上で、なにも「ゲイシャ・サムライ・フジヤマ・ニッポン」っていうね、「キョート、ハコネ」じゃなくてさ。もっともっと僕らのおんなじジェネレーションの間で、つながりって深められると思うねんね、そういうことを。
で、シャイやからしないん、意外と。日本の子達は。「いい、間に合ってるから」「十分やから」って言うて(笑)だからこれをやるのは、ちょっと自分の尻叩いてやるのはすごく、そういう意味でこういうテーマは良いだろうなと。で、うまいことやってんのが”ビックリする” 良いよな。ビックリする。
河尻:”ビックリする”。
中島:”世界がビックリする”。
河尻:そこポイントでしょうね。審査のポイントにもなってくるでしょうね、これは。
中島:ビックリするネタってそんなにないんですけども、でも、ビックリするように見せることはできるよね。これ演出の仕方でなんとでもなるし、もちろんビックリするネタを見つけるのもいいけども。ビックリするって、僕今広告の世界にいますけども、今日も広告電通賞のテレビ(広告)の審査だったんですよ。
あの、ビックリするようなもの結構ないんですよ。意外と今みんな渋くて。でもわかりやすくて、ちゃんとしてる。説明はできる、コピーは多い、だからちゃんと説明されてんねんけども、「えーっ!」ていうのはないのよ。僕らがやってた時みたいな。広告批評バリバリやった時の・・・
伊藤、河尻:(笑)
中島:もうビックリ合戦やったからコマーシャルってのは。ビックリ合戦。それじゃなくなってきてて。コミュニケーションはそれはそれでわかりやすいんだけども、ちょっと痩せてきてるなという。
ちょっとクリエイティブが痩せてきてるなっていう感じがある中で、「ちょっと、ありえへんけども、こんなんアリちゃうの?」という驚きを見つけるというのは、今のヤングはそこ頑張らなあかんと思う。
河尻:(今の若者は)挑戦できる。myJapanはその意味ではね。
中島:「これはビックリさせるぞ〜!」というのを。すっごく良いのを、丁寧に良いのを作るんですよ。よう分かるの。ちょっとほろっとしたりとかするのも作るの上手なんですけども、「ビックリしたー!」って、「やりよんなコイツ」というね、仮装大賞ぐらいのやつをね、やってほしいなって感じは期待としてありますけどね。良いテーマだと思います。
◯日本は「まだまだ外国人にとっては未知の国」
河尻:伊藤さんいかがですか。”ローカル”ってことでもいいですし、”ビックリ”させ方みたいなとこでもいいですけれども。
伊藤:そうですね。僕、ここ十年ぐらい、海外の賞の審査員をやらせていただく機会が多くて、いろんな人と出会って、その人が日本に来ることが多いんですね。その時に連絡をもらって、ガイドをする機会が多いんですよ、一緒に。いろんなところに連れて行くっていう機会が結構多くて。一番人気なのは「ロボットレストラン」ですよ。
河尻:新宿の。
伊藤:新宿の。あれがダントツ人気なんですよ。あれは、外国人からするとすごくビックリするらしくて。「うお〜、こんなものは世界にない!」って(笑) 驚くと。
河尻:まあ日本人でもビックリしますけどね(笑)
伊藤:で、あるメキシコ人が(日本に)来た時に、年末年始だったんで、10日間来て(そのうち)1週間くらいずっと一緒にいたんですよ。いい加減、僕も両親とかと正月を過ごさないといけないんで(そのメキシコ人に)「2日、いや3日くらいプライベートくれ」と。で、その時一人にしちゃったんですよ(笑) そしたらですね、なんと富士山に行ったらしいんですけど。富士駅ってあるじゃないですか、新幹線の。で、富士駅に降りれば富士山に着くと、思ったらしくて。
河尻:遠いですよね、それ(笑)
伊藤:元旦に富士駅で降りて、一応富士山はデカく見えるんですよ。富士山ってデカく見えるじゃないですか。だから歩いていけばいけるっていう視覚的な錯覚に陥って(笑) あれを目指せば行けるって言って富士駅で降りて歩き出したらしいんですよ。
中島:(笑)
伊藤:そしたら、1月1日なんでタクシーない、英語喋れる人ゼロ、もう「ロスト・イン・トランスレーション」の世界で。もう泣いちゃったって言ったんですよ、寂しくて。
河尻:それがCMになりそうですよね(笑)
伊藤:で、途中まで勇んで歩いたはいいけど、今度、もう着かないことに気づいて、戻り始めたんですけど駅がわかんなくなっちゃったんですよ。
河尻:(笑)
伊藤:メキシコ人が、日本でそういう寂しい思いをしたっていう話なんですけど、それぐらいの理解なんですよね。やっぱり。「フジヤマ、ゲイシャ」から、まだ変わってないんですよ。
だから、こういうCMを作って理解・促進するっていうのは、すごい大事なんじゃないかと。「富士駅で降りても富士山遠いですよ〜」っていうCMがあるとするじゃないですか。無茶苦茶ローカルな話ですけど。
河尻:ものすごく役に立つ(笑)
伊藤:だからやっぱり、まだまだ外国人にとっては未知の国。
中島:そらビックリするよね。例えばパッと見て富士山の映像があったり写真があったとして、
伊藤:(笑)
中島:パッとこう画面が変わって、その距離をサーっと出したりしたら「え、そんなに遠いの!?」っていう、ちょっとビックリするよね。
伊藤:それだけ富士山が異様にデカすぎるんですよね。デカいじゃないですか、新幹線に乗ってると。
中島:デカい。
伊藤:異様にこう・・・、遠近感で・・・。
河尻:近くにあるように見えますよね。なるほど。そういう切り口でも描けるかもしれないし。
中島:あとこれでも、「カルチャー」ですってね。
河尻:「ローカルな文化」。
中島:”文化”ってどういうことなんやろうね。文化って。ローカルな文化。伝統芸能みたいなもん?
河尻:ん〜、だけではなさそうですね。
中島:だけではないよね。「文化」が結構また(色んな切り口を見出せそう)。ちゅうかさ、なんでも「文化」やで。ほんまに。「これは俺たちの文化なんだから」とか言って、ロックをやるのも文化だし、たこ焼き食べるのも文化だし、よくテーマにされてるウォシュレットも文化やんね。あれはローカルとは言い切れへんけどね。
温泉かて文化やんな。そういう意味では、人が・・・なんていうかな、人を喜ばせるためにやってることは全部文化なんちゃうか思いますけどね。人を相手に何かしていることは。自分一人でやっても文化か!(笑)つまようじでお城作るとか、な。そういう人でも文化かもしれない。一人から文化ですね。「文化というのは何やろな」と考えるのもええな、これね。テーマをもらってね。
河尻:その意味ではあれですね、今お二人の話であったように、myJapanずっと見ていると散々こう色んなお話ししたりワークショップしたりしていても、さっきの「ニンジャ・ゲイシャ・フジヤマ」みたいなものを、あるいは「祭り」みたいなものをね、ピックアップされる方っていうのは非常に多いんですけれども、それもよくできているともちろんね・・・。まああの、今自撮りの最中なんですけど(笑)
中島:(登壇者を写すように自撮り中)
河尻:これどこにアップされるのでしょうか後ほど(笑)そういうものももちろんよくできていると、賞は取れるんですが、そうじゃないものの見方みたいなものが、もしかしたら必要なのかもしれないと。
(中島さんがこの時の自撮りをFacebookに投稿していました。)
◯「類似のもの」じゃないものを見つけることが”ビックリ”の第一条件
河尻:あと信也さんの今の話で要素がね、「世界」と「ビックリ」と「日本のローカル」と「文化」っていう、多分4つあるんですよね。でもmyJapan的な審査基準だと「ビックリ」っていう部分が、まあ一番重要なのかもわからないですけども。
どうですかお二人、実際のCMで信也さん、伊藤さんが人をビックリさせてる時にどうしているかっていうのがあったらもしかしたらみんな考えやすいかもしれない。
中島:仕事でね、企画をやる時にビックリっていうのはものすごく大事で。ちゅうのは今まで誰かが考えたことっていうのは、だいたい安心して観れるんですけども、意外と人の目を引かなかったりするんですよね。「あ、これあったね」って。「これ、あれみたいやね」みたいに言われるのが一番悔しいわけですよ。
だから「これは考えてへんやろ」と、「誰もこれは思いつけへんぞー!」というのをね、出すんですよ。そうすると、もう本題から外れるんですよね、全然違うこと。「そもそもなんだったけ」と(笑)例えば、富士山のコマーシャルを作るとしたら、「これは絶対誰も考えへんぞー!」って言って、「阿蘇山を富士山色に塗ろう!」とかね。
河尻:(笑)
中島:そんなんするとするじゃないですか。で、「そもそも富士山のコマーシャルってなんで朝なんだっけ」みたいな、よく反省にも似てくるんですけども、少なくともそういうことは誰も考えてへんっていうのが、僕らプロはそれが嬉しいんですよ。人が考えたのを考えるのは一番恥ずかしいんですよね。「ちょっとこれはないんじゃない、ちょっとないよこれは。なかったよね?え、これって意外となかったよね、ありそうで。」みたいなんを、どんだけ思いつけるかっていうのが、言ってみれば生命線ですよね、クリエイターとしての。
河尻:なかったようでありそう、を見つける。
中島:それもそうだし、全然なかったものでもいい。とにかく、恥ずかしいのは「これはアレ風だね」。で、恥ずかしいクリエイターは「アレみたいなん作りたい」って言う。「アレみたいな、伊藤直樹さんが作ったサガミオリジナルのマラソンみたいなんやりたいんですけど」「よし、じゃあアレを自転車でやろうじゃないか!」って。同じやないかい!(笑)って話になって。
オーディエンス:(笑)
中島:「類似のもの」じゃないものを見つけるっていうのは、それが大事ですよね。
河尻:”ビックリ”の第一条件ですね。
中島:「きっとこれは考えてへんな」というのはまず考えるね。「あ、コレは誰でも考えるなー」っていうのはちょっと、一応横置いといて。ただプロの広告の場合ね、それが分かりやすかったりするんですよ、誰かがやったやつやったりするとね。で、広告主さん喜んだりすんですけど、今回(myJapanAward)は自分たち発信だから。
河尻:ビックリさせ放題ですね。
中島:させ放題ですよね。楽しいなそれは、と僕思いますけどね。
河尻:伊藤さんどうですか。それこそサガミオリジナルだったら東京と福岡でしたっけ。同時に走ってどこで出会うか、みたいなのはそれは”ビックリ”ですけど。伊藤さん、そのビックリを作るために、”ビックリデザイン”をこういう風に考えているとかそういうのありますか。
(伊藤さんが手がけた、サガミオリジナル「Love distance」。実際に遠距離恋愛している男女が、福岡と東京からそれぞれ走っていき、出会うというCM。)
伊藤:信也さんはもうCM作ってる数が僕の、どうでしょう、100倍以上あるわけですよ、多分。そういう方ができる芸と私ができる芸っていうのはもう全然、そこで言ったら絶対、差がありすぎるわけじゃないですか。
なので僕みたいな人間は、なんていうんですかね、CMの中での芸というよりは、なにか違うこと持ってこないと勝負できないっていうことになっちゃうんですよ。僕とか、例えば東畑(幸多)くんとかって多分そういう系統なんですね。もう諸先輩方がいて、もうこの芸風には勝てないと。違うものを導入しようって言って。
だから僕がいつも自分の大学の学生に教えているのは、今回CMじゃないですか、30秒っていうCMなんですけど、CMってあんまり思わなくて、例えばドキュメンタリーのニュースだったら、ニュース番組今どういうものがあるだろうとか、お笑いのオチってどういう風に展開されているのかとか、何か違うのものを持ってきてほしいなって。
河尻:別のところから。
伊藤:そこに関しては、まだまだ例年応募作はCMって芸の中で競ってるところがちょっとあって。
中島:そうやね。CMの枠っていう中でちょっと自分をはめてしまってるね。CM枠をね。
伊藤:そうなんですよ。
河尻:CMってこんな感じのものっていう、固定観念というか。
伊藤:信也さんさっき「痩せてる」っておっしゃってたの、まさに僕もちょっと感じてるんですよね。本当に、広告批評なくなっちゃったからかもしれないですけど(笑)なにかやっぱり、「CMでやってやろうじゃねえか」みたいなヤンチャさに欠けてるっていうところは業界全体ちょっとあって、こういうネクストな才能なわけじゃないですか。
河尻:ヤングが。
伊藤:ヤングはもう暴れてほしいですよね。「今のCMなんてつまんねえだろ!次はこれだ!」みたいな、それくらいなにか方法を編み出してるぐらいのものに期待したいですよね。
中島:そうそう、もう方法から編み出せいうことやね。まあ秒数は決まってるからね。30秒ですよね。30秒の枠だけは外したらいかんけども、あとは、一応何か映っててほしいね。霊能者だけが見えるもんとか結構しんどいよな、僕らね。
伊藤:(笑)
中島:何か映ってた方がいいね。だけど、いわゆる「チャンチャン!」みたいなコマーシャルみたいな、コマーシャルってみんな頭の中になんとなく最初に起承転結みたいなんがあって、商品カットがポンポンってくるっていう、頭の中でルールができてしまってるけども、一回忘れるぐらいの勢いでいいよね。
「え、なんやったん今のって」「今のってビックリしたけど今の何??」いうのは残りますね、まずね。まあ決勝まで行くかどうか知りませんけどね。
伊藤:(笑)
河尻:それが難しいですよね(笑)
◯すごい作品に出会った時に1秒くらいよぎること
中島:今日の電通賞っていう審査は、本当に宣伝部長たちが全部審査員なんですけども、これはよくね、クリエイティブが弱い人たち、クリエイティブが弱いクリエイターっているんです結構。クリエイティブが弱いクリエイターのセリフって、「これって、広告になってないよね?」って。これクリエイティブが弱いクリエイター(のセリフ)。
クリエイティブが強いクリエイターは広告になってようがなってまいが、すごいものはすごいっていう評価をするのよ。で、僕はそうありたいんで。すごいんだけど、負け惜しみで「でも、これ広告になってないよね」とかさ、「でもこれじゃ売れないよね」。いろんなこと言い出すんですよ。それは、クリエイティブが弱いクリエイター。僕ちょっとね、それ今日審査の途中の便所で思いついてん(笑)
伊藤:(笑)
中島:あ、いるな、と。そこそこなクリエイターの生き方みたいな本書くのもええかなと。
河尻:そこそこな(笑)
中島:そこそこなクリエイターっているんですよ。ものすごく優れたものを冷めた目で「だってさ、これ商品のこと何にもわからないよね」とか言い出す人、いるんですよ結構。そこそこさんっていうね(笑)「そこそこさん」っていう本でもいいかな。
伊藤:(笑)なんか思い出しましたよ。毎年、僕ら一次審査からやるじゃないですか。あと福里さんっていう面白いおじさんと一緒に一次審査やるんですけど、だいたい誰かが、「ちょっと待ってください。アレ、なんかぶっ壊れてましたけど何か引っかかるんでもう一回見せてもらっていいですか」っていう。
河尻:ありますね。
伊藤:そういうやつあるじゃないですか。もうCMっていう型にハメちゃったら破綻してるんですけどね、大概それって。でもきらびやかな原石みたいな、その人の才能が気になるから残そうよ、みたいな。そういうのぶつけてきてほしいですよね。
河尻:そうですね。その意味だと、最後に出てくる言葉一行で変わってるから。それで復活することもありますよね。
伊藤:ありますよね。で、そういうのが意外に、箭内道彦賞とかね、そういうの取っちゃったりするんですよ、最終的には。
河尻:審査員賞は結構好みがね、左右される部分がありまして。
伊藤:審査員って意外にそういう表向きの表現だけで見てなくて、その人の魂というか、変な思いみたいなものまで汲み取って僕らは見ようとしてるから、結構そのままぶつけてきてほしいなっていう気はしますよね。変にこう、まとめようとしないほうがいいかなって。
中島:上手下手は関係ない。クオリティがね、高くなってるって言ってるんだけど結果的にはすごくそれぞれの絵がキレイだったりとか、編集が上手だったりとかするんですけれども、広告としての上手い下手は関係ない。新しい枠組みのほうがいいですよね。
いわゆるプロが作りそうな普通の、なんか広告代理店で作ったみたいな感じのが上手いわけではないですよね。これはやっぱり次の世代だなっていうね、予感のするものがほしいですよね。そういうのは審査員賞取るよね。審査員もね、「俺がこれは取る」っていう取り合いなんだよね。「これ!これ俺!」っていう。
自分自身が出るから、キレイにまとまったんを中島信也賞で選んだら「あ、中島さんってそういう人ね」ってなってまうねん。そこでどういうボケたものを選ぶかが、勝負になる。箭内道彦なんかそれだけで生きてきてるからね(笑)一切まともなことは・・・まあやってますけども。
伊藤:(笑)審査してる時って、我々も作ってたりするわけじゃないですか。映像とか。だから、すごいものに出会っちゃった時に「こいつ出てきちゃったら俺の食いぶちなくなっちゃうから、こいつ落とそうかな」みたいなことも、1秒くらいよぎるんですよ。
中島:(笑)
河尻:1秒くらい(笑)リアリティありますね。
伊藤:でも、「それやるとかっこ悪いな〜。絶対こいつ残したほうがいい。まあ残るしな」みたいな、風にして残るんですよね。でも絶対、プロ同士って思ってるんですよね。絶対。例えば信也さんがすごいいいもの作ったら「うわ〜、悔しい〜」って。
中島:あるよね、あるよね。
伊藤:ありますよね!
中島:伊藤さん空港やりよったから、「ええな〜、この辺がな〜。俺はどないしようかな〜。竹芝桟橋かなんかやろうかな」って、すぐ同じことで考えてまうねんけどね。でもやらないんですよね。結局やらないんですけどね。
なんでもいいんですけども、そういうライバル意識ってのは必ずあって「ちくしょ〜、やられたなあ」って。でもヤングの場合は、すごいの作るやついたら「ちょっとウチ来ない?」って。
伊藤:それはあります(笑)
中島:すごい人たちが「ケトル来いよ」とかさ、いろんな話になったりとかするよね。僕なんか「PARTY行けば?」とか言うよ。ウチも来てもいいんやけどもさ、ウチも新しくしたいんやけど。そんなんもあるからね。ぜひとも思い切って、ジャンプしてほしいなと思いますよね。
河尻:それが今、”ビックリ”っていうことに語られたことの意味だと思うんですけど、必ずしも派手ってことでもないですよね。地味でもすごくいいなあっていうのは毎年僕のほうで拾ってるんですけど。
中島:「あれ一見渋いけども、これすごい発見ちゃうの?」っていうものね。
河尻:っていうようなね、審査員の見方によって賞というのは決まってくると。そういうことなんですね。
-ここから、テーマの1つ”ローカル”から関連して、運営スタッフよりCSCについてのご紹介をし、また、CSCのパートナーである復興庁の地主さまからもお言葉をいただきました。
CSCについてはこちらをご参照ください!
いよいよトークセッションも大詰め!終盤は、今回のトークのまとめから、前回のmy Japan Awardの受賞作品を見ながらゲストの方々から作品についてのコメントをいただきつつ、会場の皆さんから集めた質疑応答までをお送りいたします!
Part3は近日公開いたします。
Text:Ryo Taniguchi