キーワードは「バカまじめ」 広告のプロからアマへ。流儀伝える

※絵コンテワークショップ第一部のブログをご覧になる方はこちらからどうぞ。

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皆さんこんにちは。
先日のレポートに引き続き、今回は絵コンテワークショップ 第二部の内容についてお送りいたします。

第二部では、参加者の方に提出いただいた絵コンテを、ゲストのみなさんに講評していただきました。

なお、都合により、提出者の方々の名前・絵コンテは伏せさせていただきます。

代わりに、簡単ではありますが、絵コンテの説明をさせていただいてます。


 

【絵コンテ1】

秋田県のなまはげをホラー映画風に描いた作品。「Welcome悪い子!」で締めくくる。

 

提出者:ターゲットに定めたオーストラリア人を東北に呼び込もうというところから考え始めました。そこで、想像もできないような怖い行事である「なまはげ」を通して、秋田の文化を広げられないかと思い企画しました。

黒田:ホラー映画のように、というのがとてもいいと思いました。コンテを見ていると、カット割りもできている。とにかく怖く、音楽も怖く、ホラーの一点に絞って起承転結でまとめたらいいんじゃないでしょうか。

福里:たしかに、「なまはげ×ホラー」っていう企画はできていますね。

河尻:もっとブラッシュアップするとしたら、「なまはげ×ホラー」を生かしつつ、その根っこをどうやったら一番面白く見えるかってことを考える点かも知れませんね。

福里:さらに言うなら、なまはげっていうものを外国人が見たときに、どう伝えると面白く見えるのか、興味を引くのかを考えたほうがいいと思います。このコンテだと、なまはげをおどろおどろしく描けば、その時点で興味を持ってもらえると考えているように見えますが、そこに関しては疑問です。ただ怖いだけでは少し弱い気がしますね。このコンテの最後みたいに、いっぱい泣いた後に「あ〜気持ちよかった!」って笑顔になるのが面白いのか、包丁をもっている残虐な奴が伝統的に大事にされているのが面白いのか、はっきりさせたほうがいいと思います。「なまはげのどこが面白いのか」っていうテーマで、どのように外国人にプレゼンするのかっていうのが絵コンテを通して見えたほうがいいのではないでしょうか。

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【絵コンテ2,3】

2.日本の朝食をテーマに、バリエーションの多さを押し出した作品。
3.お裾分けの連鎖を切り口に、お裾分けの素晴らしさ、ありがたさを描いた作品。

※絵コンテ2,3は提出者が同じ方です。

 

提出者:日本の文化でびっくりさせるものって、「ドキッ」とするびっくりと、「へー」っていう知識になるびっくりの二つがあると思います。日本人にとっては当たり前だけど、外国人からみると新鮮である部分に着目して作りました。

河尻:朝ごはんとか、お裾分けっていう着眼点はいいと思いました。でもその後、企画になりきってないと思うんですよね。

福里:同じく、掴みはいいと思います。ただ、これだと朝食を紹介するCMになっていて、「おおーすごいな日本は!」とはならないと思います。広告っていうのは基本的に見てもらえないもの、だから見てもらうためにどうするのかっていうところを考えてほしいです。お裾分けも、いい感じのお裾分けがあるっていう話から入って、「そんなものまでお裾分けするの!?」っていうオチに持っていっても面白のでは。逆に、ある日、孤独を感じて辛い思いをしている隣人にお裾分けして、良い関係ができていくみたいに感動的に描くのもアリかなと思います。

黒田:お裾分けっていうのは、幸せをシェアするっていうことですよね。その事象を紹介しているだけになっていので、最初にお裾分けをした人のところに、巡り巡って、最終的に誰かがお裾分けを持ってくるみたいなストーリーを作るとかしたらいいんじゃないですか。

河尻:多分、作者さんの頭の中では素敵なイメージがあると思うんですよ。だけど、最初にそれを追っては難しいです。それだと漫然とした素敵な映像になってしまうから、フックというか、とっかかりをどうするかっていう肝をつくると映像にした時に生きてきます。

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【絵コンテ4】

「推しメン」という、ハンコをモチーフにしたキャラクターが秋葉原で、あらゆるものに太鼓判を押して周る作品。

 

提出者:友達に「判子は日本の文化だ」って言われたところから考えまじめました。「判子を押す」っていうことから、「誰かを推す」という言葉を連想しました。それで、「推す」と言えばアキバのアイドル文化があるじゃないかと思い、企画を考えました。町を紹介するキャラクターとして、「推しメン」をつくり、アキバという町を紹介するという話にしました。

黒田:「推しメン」というキャラクターを作るということはアイディアとしてアリですね。でも、もうちょっと整理してもいいのではないかと思いました。先ほど福里さんが言っていたように、その「推しメン」をどのように面白く見せるのか、などを考えたらいいと思います。

福里:そうですね。結局、「推しメン」が人気者になれるかどうかが最大のポイントですよね。ペプシマンも、ただカッコよく出てきただけでは人気は出なくて、最後に頭をぶつけたりとかドジなところがあるから人気が出たんです。同様に「推しメン」を人気者にするためにはどうしたら良いのかを考える必要がありますね。

河尻:あとは、そのオスっていうのが、判子を「押す」っていうのと推奨の「推す」にかかってるということをちゃんと説明出来るかっていうところでしょうね。二つの意味の企画をするんだったら、そこがすんなり入ってこないと「推しメン」が面白くても、「なんか面白い映像だけど何が言いたいのかな?」ってなっちゃうと賞までは届かないと思います。

 

 

【絵コンテ5】

牛スジや冷やしあめ、お好み焼きなどを通して大阪の素晴らしさを表現した作品。

 

提出者:優しかったり、まじめだったりする日本人が、どんな文化よりも外国におすすめ出来るんじゃないかなと思って企画を作りました。私はいつも、企画をするときにギャグを入れちゃうんですけど、今回はあったかいものを作ろうとして失敗しました。

河尻:どの辺が失敗だと思う?

作者:まず、企画が一つにまとまりませんでした。

河尻:そうだよね。少しオムニバスみたいな感じになっちゃったね、牛スジも出てくるし、冷やしあめもお好み焼きも出てくるし。

福里:確かに、テーマをひとつに絞ったほうが面白い可能性は高まりますよね。だいたい、CMであれもこれもっていうものは印象に残らない。牛スジでいくなら、外国人が「ギュースジ!ギュースジ!」って言い出すくらい覚える感じかな。

黒田:大阪には大阪のいいところがあるじゃないですか。ノリがいいとか、ネタはいっぱいありますよね。交差点で知らない人に「ばん!」ってやると「うっ」ってみんながやってくれるとかね。

 

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河尻:割とみなさん、綺麗にまとめようとしすぎています。その意識が強くいあまりにもっと、根っこの部分がイケてないように感じました。

黒田:世の中に出たときにどう面白いんだろう、ちゃんと伝わっているのか、という客観的な目線が、みなさんには足りないように感じました。中に入ってしまっているっていうんですかね。

河尻:賞を取るといことを考えると、やっぱり「この切り口が面白い」と思えるアイディアとか企画を、シンプルに映像にしたほうが勝ちやすい。さらに、そこが握れると割と「細かいところをどうしよっかな」っていうところにメンバーがノレるし、工夫もしやすいと思います。

福里:とにかく、みんなが納得できて「間違いなく面白いよ!」ってところでスタートして作るほうに入るのがいいと思います。

黒田:企画が土台なんで、根っこが張れてないといくら制作をがんばってもひ弱な木にしか育たないですよ。僕の場合は企画が弱いと感じたら、もう一度企画チームと話し合うこともあります。逆に、ものすごくちゃんと企画が根を張れていたら、制作が天気の都合などでうまくいかなくても、そんなに悪いものにはならないですよ。一回できたら、客観的にそれを評価してみる。ものすごく冷たく、客観的に見てくれるもう一人の自分を頭に置いておくことが大切だと思います。

 

【質疑応答】

河尻:最後に、質疑応答に入ります。

質問者:ゆうパックの企画のときは、どのようなお題が出たのでしょうか。また、絵コンテに「企画A」となっていたと思うんですけど、「バカまじめ」以外にもアイディアがあったんですか。

福里:実は、「ゆうパックをこういうふうにしてください」っていうのではなく、訴求ポイントを伝えられただけのものでした。さっきのものでいうと、ゆうパックは転居先までお届けしますとか、ゆうパックならではのサービスを幾つか提示されて、「こういうことをテーマにゆうパックCMを考えてください。」っていう感じのオリエンテーションでした。企画の数に関しては、広告業界以外の人は誰もが驚くぐらい、たくさん考えてます。出来上がったCMなんて、実現するのは考えてるうちの100分の1か1000分の1ですよ。

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河尻:たまたまですけど、「ばかまじめ」というのが今日のキーワードかもしれないですね。結局、企画を演出するときには、こんなに真面目に、こんなにバカなことをやってるわけじゃないですか。黒田さんの言っていた不真面目だったっり、ふざけてるっていうのが根っこになっているんじゃないかな。バカまじめな人はmy Japanに向いているということですね。

黒田:クライアントがいて、お茶の間の消費者がいて、僕たちはその間にいるわけです。僕たちは両者の間に立つ翻訳家であると思うんですよ。もちろん、翻訳の仕方はそれぞれの方法でいいと考えています。いろんな検証を重ねて、根っこの太い、幹の太い企画を見つけることが重要です。何度も検証して、作りたがらずにまず考えてスタートする姿勢は大切にして欲しいです。そこが土台になってくるので。そしたら、あとは楽しくても構わないと個人的には考えています。僕の場合は、「まじめにふざける」っていうのが楽しいので。

福里:実際に作るときに「これでいいのかな?」って迷ったら、自分が40歳になった時にそれを見て恥かしくないっていうふうに考えてみたらどうですか。学生の時に考えたことって、いま見ると超恥ずかしくなるわけですよ。40歳になった時に「学生の時、映像作っていたそうじゃないですか。見せてくださいよ。」って言われて「いいよ。見せるよ。」って見せられるようなものを作る感じ。あとは、自分の作品を引いてみることです。そしてかなり批判的にみる。最後に、やること自体が偉いと思っていますので、ぜひ頑張ってください。

 

ゲストとしてお越しいただいた黒田秀樹さん、福里真一さん、河尻亨一さん、そしてご来場のみなさん、本当にありがとうございました。

参加者のみなさんにとって、プロの方の意見を聞く貴重な機会となりました。厳しい意見、新しい発見、面白いアイディアがいろいろあったと思います。いかがだったでしょうか。

ぜひ、これからの作品作りに大いに活用してください。

 


 

 

私たちmy Japanは、今年で6年目を迎える、my Japan Award 2015を開催します。
my Japan Award とは、「日本に生まれるさまざまな価値や魅力を、クリエイティブの力で海外に発信する映像コンテスト」です。

<my Japan Award 2015>

◯今年のテーマ:Local Culture〜世界がビックリする、日本のローカルな文化〜

◯エントリー資格(学生部門):大学生、大学院生、専門学生、高校生、中学生、小学生

◯エントリー資格(U-29部門):29歳以下の社会人

エントリー方法:下記URLより、必要事項を記入

提出物:30秒の映像

出展料:無料

エントリー締め切り:10月4日(日)

作品提出締め切り:10月11日(日)

募集要項の詳細はこちら

エントリーフォーム:https://docs.google.com/forms/d/1qY7SzkF6Vkw1LsckEoPwpUoQyv8zuYKNjzPQHdL-5J8/viewform

 

スタッフ一同、たくさんの応募をお待ちしております。

Text:Junta Mayuzumi

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