「Creative Summer Camp」の会津コースロケハンが、7月11日(土)、12日(日)に福島県会津若松市内にて行われました。この日の東北地方は天気も良く、会津若松市内は30度に近い猛暑日!
会津でのテーマは「会津漆器×○○」です。
今回は、会津コースの参加者24名と、職人さんの工房や、漆器を扱う料亭など様々な場所を巡った旅の様子をお送りします!!
【会津漆器について】
福島県の西部にあたり、西の越後山脈、東の奥羽山脈に挟まれた広大な会津地方では、400年の長きに渡り、伝統産業の「会津漆器」が多くの人を引き付けてきました。産地では売上の減少に苦しんでいますが、一方で今、日本人の暮らしの粋の詰まった「漆器」という素材が除々に見直され始めています。
ここで、CSC会津コースでは、
「今まで漆器に興味のなかった若い世代の日本人や外国人にも、魅力を気づいてもらえるような会津漆器の発信映像を作る」ことをテーマにしています。
【ロケハン1日目】
早朝から日差しが強かったロケハン1日目の朝。東京駅に、会津コース参加者が集まり、いざ出発!
途中3箇所のSAに停車しながら、無事に会津へ到着しました。
お腹もペコペコな参加者を待っていたのは、「料理旅館・田事」の看板。
ここでは、会津漆器の代表的な器である”手塩皿”を用いた「会津漆器マリアージュプラン」(主催:会津漆器協同組合)を堪能しに訪れました。
そしてここで、会津のコーディネーター、株式会社明天・貝沼航さんと合流!
参加者が全員席に揃うと、運ばれてきたのは会津郷土料理が堪能できる「会津おもてなし膳」。
運ばれてきて最初に目に入ったのは、”会津塗”の手塩皿に盛られた小鉢。
田楽や煮付けなど、どれも味付けがやさしくて、何より漆器の艶が料理を引き立たせます。
そして会津の代表的な郷土料理、“こづゆ”。
こちらは会津藩の武家料理や庶民のごちそうとして広まり、現在でも正月や冠婚葬祭などハレの席で必ず作られる郷土料理です。
そして彩鮮やかな、この日の主役は、”めっぱめし”!
会津地方では農作業のときに「曲げわっぱ」の器にご飯を入れて持参し食事をする習慣がありました。このことを“めっぱめし”と呼んでいます。参加者には、鮭・ぜんまい・シラスの3つから選んでもらい、それぞれ“めっぱめし”を堪能していました。
昼食をいただきながら、福島県博物館・学芸員の小林めぐみさんから、会津漆器の歴史を詳しく説明していただきました。
小林さんは、
「会津漆器の魅力は”いい意味での野暮ったさ”かな。これは、東北地方のモノならではの印象かもしれないです。」
「漆器は、何度も使って洗い、そして拭うことを繰り返すことで、そこから愛しさが生まれるのです。」
と、素敵な笑顔でお話ししてくださいました。
さて、お腹もいっぱいになったところで、次の目的地までは徒歩移動。
向かった先は、100年以上の歴史を持つ「御蒔絵やまうち」の3代目、山内泰次さんの工房です。
“蒔絵”とは、漆器の表面に漆で絵や文様を描き、そこに金や朱などの粉を「蒔く」技法です。
山内さんの工房には、たくさんの蒔絵筆や様々な金粉があり、作業台には漆がたくさん重なっていて長い年月が感じられます。 山内さんのこだわりは、「自分の手で作った漆器を、直接お客さんにお届けしたい。」という伝統の技と心にありました。
また、山内さんのつくった漆器が並べられているギャラリーも拝見させていただきました。
バスに戻り、次に向かった先は、これまた140年以上続く「三浦木工所」の4代目、木地師の三浦圭一さんの工房です。
三浦さんには実際に作業をする場所に案内していただき、漆器の土台となる”木地”を挽く工程を見せていただきました。
木のいい匂いが漂う空間には、轆轤(ろくろ)の機械や飛び散った木の削りくず、そしてこだわりの「自然乾燥」を数十年させた木が山積みになっていました。
“木地師”は主に、漆器の木地づくりが専門ですが、三浦さんは独学で学んだ漆塗りで、オリジナルの器も工房横で販売しています。どれも魅力的な器で、参加者が実際に手にとって肌触りや艶を確かめている姿がみられました。
ここで2人の職人さんの工房を巡り、だいぶ漆器ができるまでを堪能したところで向かった先は、「関美工堂」さんです。現在の代表である関昌邦さんは不在でしたが、会津漆を用いた新しい漆器製品をプロデュースされている方です。
「漆器=高級品」という概念を取り払い、ライフスタイルに漆器を組み入れるために漆器の新しい魅力を発信した“BITOWA”を会津の同業者さんたちと立ち上げました。
参加者は、この「関美工堂」にあるスタイリッシュでカッコイイ漆の作品にも魅力を感じていたようにおもいます。
会津若松市の空に、綺麗な夕暮れが見えかかったところで、「薬膳・古川」にて懇親会。
さきほどの職人さん達に加えて、木地師の荒井さん、会津漆器協同組合・理事長の小沼さん、会津大学短期大学部の井波先生も交えて大いに盛り上がっておりました。
そして夜は、会津といえば「ここ!」と言ってもいいぐらい有名な「会津藩校・日新館」に宿泊。
1803年に創設された文武の両教科を教授する総合学校として設立され、会津藩士の指定は10歳になると入学することが義務とされていたようです。
この洗練された建物は、山の奥にあり、街の灯火もありません。
そのため、夜空には満天の星が散りばめられており、北斗七星や天の川、流れ星をはっきりと見て興奮する参加者もいました。
こんな貴重な体験をできるのも、夏の会津ならではですね!!
【ロケハン2日目】
会津の山奥で迎えた2日目の朝も快晴!The ロケハン日和!!
おいしい朝食を日新館でいただいて、行き先は会津大学短期大学部。
ここの卒業生で、いま若手の会津漆器職人として活躍されている大竹由布子さんのお話をききました。
お父さんが蒔絵師の大竹さんは、「子どもの頃から父の仕事ぶりを見て、面白そうだなー」と思っていたそうです。そこで、地元の会津大学短期大学部に進み、漆芸家・井波先生のもとで漆器づくりの基礎を習いました。その後「会津漆器技術後継者訓練校」に入学し、さらに技術を磨いたそうです。
大竹さんの作品はどれも可愛らしく、個性的な絵や色でデザインされていました。
これがきっと、若手職人さんならではの”会津漆器”なのではないかと感じます。
そこからバスで移動し向かった先は「NPO法人はるなか漆植栽地」!
いままで、漆や漆器をみてきたわけですが、ここで大元の「漆の木」を見学します。
この「漆の木」は、会津はもとより、日本全体を見渡しても、もうほとんど生産されていないという問題があります。
そこで「NPO法人はるなか漆部会」では、会津の漆器を会津産の「漆の木」で作りたいと考え、初瀬川健増に学び、会津の山の谷に「漆の木」を植栽し、15年後の漆と漆蝋の成長を実現させる活動をしているそうです。
まだ植えてから10年しか経っていない細い木はこれから年月を経て立派な木に成長します。
ちょっとここで、”漆”の樹液を採取する過程をご説明。
まずは漆の木に一度傷をつけ、「これから漆を採取するからよろしくね。」と挨拶をします。
そして日を置いてからまたもう一度傷をつけ、「今日のご機嫌いかがですか?」と問いかけます。
もし漆が沢山溢れてきたら元気な証拠!でも、焦ってはいけません。
木を褒めながら少しずつ採取して、のこりはまた後日、採取します。
一方で、まったく採れない日はご機嫌斜めなので、労わりながら次に掻く日を待つのです。
こうして、漆の木はまるで我が子を扱うように、丁寧に慎重に扱う必要があるようです。
漆って、なんだか ”繊細”なんですね。
この日のお昼は、はるなかの皆さんとご一緒させていただき、美味しいご飯と豚汁をいただきました。
シンプルなお料理ですが、大変味わい深く、お代わりを5回もする参加者も…。(笑)
大自然に触れた後、さいごのロケハン先は、
「七日町・漆器問屋散策」と題して、おみやげ屋さんめぐりでした!
ここでは参加者は自由行動。
古くからある漆器屋さんや、有名な味噌屋さんを巡っていました。
この日は暑かったので、ソフトクリームがわずか数秒で溶け出すというハプニングも(笑)
また、喫茶店をのぞいてみると、
いままで拾ってきた素材を集めてチームミーティングをしている姿も多かったです。
【ロケハンを終えて】
こうして、会津漆器に触れる2日間の旅は終わりました。
参加者は、行き先で出会った講師の方や職人の皆さんに積極的に質問をしていて、自らアイデアを拾おうとする姿が多く見受けられました。
参加者からは、「親に会津漆器を買ってあげたい!」、「大人になったら、この漆器欲しいな。」という声も聞こえました。
きっとこれは、
会津漆器がつくられるルーツを知って、”会津漆器”にアツい想いを馳せる人たちの話を聞き、そして実際に触れたことで生じたリアルな感情なのではないかと、私は感じています。
また、今回のロケハンでは、会津の地元の人たちや、バスの運転手さんなどの多くの方が関わってくださっています。
そして、コーディネーターの貝沼さんのお陰様で、密度ある2日間を過ごせました。
貝沼さんがおこなっている「テマヒマうつわ旅」のホームページでは今回お世話になった職人さん達の紹介も掲載されていますので、ぜひご覧ください!
皆様、大変お世話になりました!!
my Japanでは、TwitterやFacebook、instagramなどで活動の様子を随時更新しています!
ぜひフォローをおねがいします。
それでは、次のロケハン「赤湯チーム」のレポートもお楽しみに!!!
Text:Erika Abe