my Japan 2016 Kick Off Event 〜クオリティの高い映像とは〜 <1>

5月12日(木)に、my Japan Award 2016 キックオフイベントを開催しました!
今回はトークセッションの一部を2部に分けて公開します!

ゲストにはmy Japan Awardの審査員でおなじみ、
東北新社・中島信也さん、銀河ライター・河尻亨一さんをお呼びしました。

トークセッションでは、my Japanをよく知るこのお二方に、映像制作にあたってのアイデアの出し方や、それを企画にしていくまでのコツをお話しいただきました。
いつも以上に本質的な部分まで掘り下げられた今回のトークセッション内容をご覧ください!

 

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◯my Japanに関わり始めた経緯


河尻亨一さん(以下、河尻)
:my Japanもついに7年目になるの!?もうずーっと関わらせて頂いてます。

中島信也さん(以下、中島):このmy Japanというのは、まあ岡本くん(元代表)が突然始めたと言っても過言ではなく、「広告批評」が終わったくらいかな、そのあたりだったんですね。
いわゆるコマーシャルというのは、経済に根ざしたコミュニケーションを作っていくということなんです。
例えば…「伊右衛門」のお茶のコマーシャルとかね。
そうじゃないコミュニケーションを映像で作ってく時代になっていたし、”日本を世界に発信する”、というのが大きなmy Japanのミッションだというのを聞き面白いなと思いました。
どっかの企業が得するわけでも何でもないんですけど(笑)。

ただ、日本のことをあまりに世界の人が知らない。で、映像というツールがこれだけ皆んなが手軽に使えるようになってきて。『これやってみたら面白いんじゃないか?』ということで一回審査員やったんですよね。
そしたらやっぱり面白かったんです。
そしたら岡本くんがそれをやったおかげで卒業できなくなったりとか、留年とか色々して。「もうやだ〜」とか言ってるのに、『いやこれはオモロイからやれ!』と、僕と河尻くんがとにかく無理やりでも続けようとしたのが、このもう7年前ですか。それからスタートしたっていう。
そんな、元々は日本の広告産業ベースで何か新しい面白いことができないか悶々としていた二人が、またmyJapanの校長と教頭になってやっているということなんですね。それが大元です、はい。

 

河尻:まあ何となく今ので、この7年間を語れたということでよろしいでしょうか。まあ、ただですね、お陰様でじゃないですけれど、レベル、上がってますよね。

 

中島:いや、もうほんとに映像のクオリティももちろん上がっているんですけれども、目の付け所とかっていうのもすごく幅が広くなってきていて。まあいわゆる日本を発信するっていうと、一番最初はね、頭で考えられるごくごく普通のアプローチが多かったんですけれども。色んなひねられたアプローチをするようになってきて、クオリティ的にもアイデア的にも上がってきている、と思うのが現状ですね。

 

河尻:皆さんのお手元のパンフレット、小さいリーフレットみたいなものを見ていただくとわかるように、まあ僕は編集者なんですけれど、それ以外にも錚々たるクリエイターの皆さんが審査員として関わっていますよね。

 

中島:日本にも映像のコンテストが色々あって、映画祭だったりすると審査員は映画監督ということなんですけれども。主に広告コミュニケーションに携わっている、すごい話題の時の人たちがmyJapanには関わっていると言って良いんではないでしょうかね。
このPARTYの伊藤さんっていう方は元々ADKにいたんですけども、活動の幅がやっぱりCMだけじゃないですよね。インタラクティブの方とか、新しいコミュニケーションの技術を使った取り組みをやっておられるスターですよね。

 

河尻:なんか、伊藤さんもちょっと写真が出家の感じが出てきましたけどね。(笑)

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中島:須田和博さんは去年からのエントリーなんですが、博報堂にいる中でも単なるテレビのコマーシャルじゃない、色々なネットを使ったコミュニケーションなんかを作られている人です。
僕が大貫卓也さんとやったカップヌードルの、皆さんが生まれる前の作品になると思うんですけれど、『hungry?』っていうのがあったんですよね。原始人がマンモスを追いかけるやつ。これなんかにも実は若手で参加してたっていう経緯があります。

村田俊平さんはですね、これは須田さんが連れてきた今九州で最も熱いCMプランナーで、まあ話題の作品をいっぱい作ってまして。売れてる子っていうのは必ずどっかでスランプが来るんですけれど、今須田さんもちょっと自称スランプらしくて。こういうスランプの時は若者と一緒に作ればスランプ脱出できるんで、私たちも全員ボランティアでやっているんですけれどね、須田さんが無理やり『お前もやれ!』と、今年から村田くんを巻き込みました。(笑)

そして福里真一さんは巨匠中の巨匠ですね!
CMプランナーとしては、あの『宇宙人ジョーンズ』からですね、ソフトバンクの最初の頃とか、面白いコマーシャルというものには全部絡んでますね。『マルちゃん製麺』なんか今ね、ガンガン売ってますけれど。(笑)

この審査員の人たちを、集めるのは現実的に無理な話。
だから奇跡的にすごいAwardになってるんですよね。ただ、何で審査員やってるかっていうと皆さんの作品と出会えるからなんですよ。で、その作品がやっぱり一企業のためというよりも、まち全体、ひいては日本全体、ひいては世界を良くする、楽しくするために、映像の力で世の中を楽しくしていくことが出来るんじゃないかな、というところの希望を僕らも持ってるからこそ、ボランティアとしてね、こうやって参加してるというのはありますね。

 

河尻:なんかもう校長がどんどんまとめて。

 

中島:いやいやいや、まとめるつもりは全然ないんですけどね。

 

河尻:皆さんポイントわかりましたか?今ここまでの話で。
まず最初、my Japanは歴史があるものなんだと。長くやってますよと。
パート2、審査員がすごい。エントリーするとそういう人たちに作品を見ていただけますよっということは何となく伝わったと。
あと審査員は全員タダでやってる、ボランティアだっていうことを。なかなか僕らにとっては重要なんですけれど。

何でそこまでしてやるんだろうなって考えてみたんですけれどね。辞めるのは自由ですから。なかなかmy Japanって大変なんですよ、行事もいっぱいあるしね。しかもキャンプの場合は色んなとこ行くし、またこれが徹夜になるとかですね、ハードなんですけれど、でも何でやってるのかなって考えてみたらですね。
校長もさっき言ってましたけど、やっぱ皆さんがCMを作っていくそのプロセスが見れるっていうのが楽しいんですよね。やっぱこう、若いですから、審査員が言ったことに対してどんどん良くなっていくじゃないですか。成長の後が見れるんですよ。そこがまあ辞められない理由なのかなぁと思いつつ続けてきましたね。

さて、今年ですね、この場に集まっている皆さんがmy Japanをイマイチよう分からんまま来てる方もいらっしゃると思うんですよ。なんで来たんですか?っていうのを逆に聞いてみたいんですけれど、すでにmy Japan去年応募しましたみたいな人、あるいはキャンプに参加しました、どっちかっていう人もいるけど….いますか?

 

(オーディエンスから数人が挙手)

 

そんなにいないですねぇ。もう全然初めましてですけれど、何となく興味があって来て頂いた方は?

 

(半数程が挙手)

 

河尻:あ〜結構じゃあそっちの方が、信也さん、多いんですね。
気づいたんですけれど、この7年間で一番女子率が高い!

 

中島:あ、今年そうですね〜。やっぱ女子が映像の世界に加わってるということですね。

 

河尻:そんな緊張しなくていいんでね、なんで来たのかなっていうのを、何でもいいですけれどちょっと喋ってもらえますか?何キッカケ?

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参加者:映像の制作で、今年専門学校に入学したんですけれども、映像を作るきっかけというか、

 

中島:力試しがしてみたいんだね。

 

参加者:そうです、映像をやりたいなと思って勉強してて。

 

河尻:それはまさに出来ますよね?

 

中島:もうピッタリですよねぇ。

 

河尻:隣の方は?

 

参加者:元々広告に興味があって、大学が今文学部コミュニケーション学科に所属しています。
授業でも「広告とマーケティング」という授業を取っていました。
その時に高校の友達がTwitterでこのイベントをRTで流していて、参加しました。

 

二人:あ〜なるほど。

 

河尻:広告側から来るってね。映像から入ってくる人と、広告・コミュニケーションから入ってくる人と随分混ざってますよね。もうお一人くらい聞いてみようか。

 

参加者:私は自分でグラフィックとか映像を作るのがすごく好きで。楽しめる映像を自分で作って、SNSに上げたり。将来CM業界、映像業界に入りたいなと考えていて。学生団体の広告をしていてもやはりアイデアを出すのって難しいんで、今回トークセッションして頂けるということですごく興味があって。

 

河尻:今回は企画の勉強にもなりますよね。

 

中島:一個聞きたいのはね、以外とね、僕らの時に比べるとCMの世界に来たいなっていう人が減ってるんですよね。大変そうだなぁって。そんな中でCMの世界で働きたいなあっていう動機は、強いて言うと何です?

 

参加者:大学で町の動画を、その町の駅でイベントやりますよっていう動画を作ったんです。すっごい田舎の町なんですよ。田舎なんですけれど、それを自分の地元のテレビ局(群馬テレビ)とNHKで放送していただいたんですね。そしたら、人が予想以上に来てくれて。

 

中島:映像の力を知った?

 

参加者:はい。映像で人を集められたらってすごいなぁって。

 

中島:あ〜なるほど。ピュアな理由ですね。例えば嵐に会いたいとか、そういうんじゃないんですね。(笑)
僕はそうやったけどね、山口ももえと生で会えるかもしれんと思ってね、考えて入ったんですけどね。

 

河尻:でもそっちもあっていいですよね。

 

中島:だから今回初めて作る人もね、作って初めてなんか面白くなってきた、っていうのがあると思うんでね。作ってみるということからスタートする、キッカケとしてもいいと思うんですけどね。

 

河尻:まあやってみなけりゃわからないね。

 

中島:向いてる向いてへんあるからね。天才やったって思うやつと、例えばサマーキャンプなんか行くとね、チーム制やから、あっ天才がおるから俺は普通にだまっていようとかね。(笑)

 

河尻:ちょっとその後ろのボーイも聞いてみよう。初めてですよね?

 

参加者:あ、そうです。学校で中島信也さんのCMを流していただいて、ダカラのCMとか、面白いなぁと思って。どんな考えとか、どんなことを常に思っているのかな、と。

 

中島:結構アイデアの出し方、欲しいみたいだね、みんなね。学校はどこですか?

 

参加者:学校は日文大学の法学部の新聞学科です。湯浅先生の。

 

中島:あ〜じゃあ僕の授業を聞いて?

 

参加者:そうです。

 

河尻:ちょっとまた聞いてみたいんですけれど、みなさんの中でいわゆる美術系だったり、美術系の大学を卒業した方はどのぐらい?

 

(5人くらい手を挙げる)

 

河尻:あ、そんなにいないみたいですね。もうちょっといてもいいような気がしているけれど、そういう感じなんですね。そしたら逆に面白いかもしれないですね。今みたいに新聞学科の彼が作るCMっていうのはどうなんだろうっていう、そういう楽しみもあるんですけれど。そんな感じでなんとなく今日皆さんがどんな感じで来ていらっしゃっているのか、まあ一部しか聞けてないですけど、わかってきました!

 



◯映像制作における”アイデア”と”企画”と”演出”

河尻:信也さん、この『誰よりも光るアイデアを出すために』っていうこのトークセッションはですね、誰よりも光る校長がちょっと今から語っていく時間になっていくと思うんですよね。(笑)
ただ、まだそんなmy Japanを知らない人が多かった気がしたので、過去の受賞作をいくつか見て、それを僕たちの分析ではないですけど、『こういうタイプのコマーシャルがあるよ』っていうのを分かってもらって、その上でアイデアの話をすると分かりやすいんじゃないかと。

 

中島:アイデアを考える時って、一つの軸で考えるというより僕らプロ達は、「こっち系だとこうだよね、でこっち系もあるよね」っていう何系っていうスレッドを立ててますよね。それを同時に並行していくつかを進めていくことが多くて、その中で「やっぱこれだなぁ」というのがあるんですよ。一個の軸をずーっといくよりも、「あ、こういう考え方もあるんだ」っていう幅の広げ方をしていきますね。

 

河尻:まあ皆さんももしかしたら一度見たことがあるかもしれないですけれど、去年のグランプリを獲ったマンホールの作品を見てもらいましょうか。
これを見ると、結構レベル高まってるなあ、って感じますよね。

河尻:まあ今年とテーマがちょっと似てるんですけれど、去年はローカルの魅力ということでした。
中島校長、これはどういうタイプといえますか?

 

中島:そうですね、この作品はどっちかっていうとデザイン的な、アートディレクション的なものですよね。
画面のかっこよさみたいなのを追求してます。実際にはこんな風にマンホール回せませんが、それをDJのレコード盤に見立てて、そういう風にすごく加工をされてる形のものやね。
ただ、そのベースには、誰も目をつけないような、マンホールがある。僕もこの作品に出会ってからマンホールを見るようになりましたよ。
作った人には、マンホールが『面白くできるんじゃないかな』ということがわかってるんですよ。その発見が最初にあって、この人は『ちょっとDJ風の、かっこいいグラフィカルな、デザインチックな感じでやろうかな』っていうことを考えて、映像の完成度が高くなっていったって感じでしょうね。

 

河尻:あの、二十代って結構”グラフィカル”って言葉を知らないみたいですね。僕もこの前、思いかけず原稿にグラフィックって書いたら、「何ですかそれ」って質問がきました。最近は”グラフィックデザイン”っていうのがあるみたいですね。

 

中島:映像でありながら、平面のデザイン的な、ポスター的なかっこよさ…、平たく言うとそういうことかな?

 

河尻:そうなんですね。もしかしたら広告っていうこともあんまり知らなかったりするのかな?
良いですね、この一回目の感じが!

 

中島:良いですね〜。

 

河尻:ついこの間Awardのファイナルイベントをやったばっかりなのに、今日は一回目なんですけど、やっぱりあれですよね、ローカルな魅力って考えた時に、普通CMとか映像とか30秒で作ろうと思ったらですね、やっぱり名産とか、観光名所とかに目が行きがちなんだけれど。
今のマンホールの映像を見てから気にするようになったって言ってましたけど、あんなローカルなマークがマンホールに書かれているっていうことはあんま知られてないわけですよ。そこに注目して、気付いているっていうことがまずアイデアですよね。

 

中島:その発見がアイデアだよね。

 

河尻:で、あともう一つは企画ですよね。そのマンホールでなんかやったろう!っていうのがアイデアで、『これはみんながビックリするぞ』って思ったとしたら、ただ普通にそのアイデアをずっと見せていっても面白くない。
ポスターでも良いかもよって感じになるんですね。
けれど、それを映像として表現するための企画として、『さっき見たのはどういう企画になっているか』、会場の皆さんに聞いてみましょうか?シンプルに一言で!

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参加者:DJのディスク?

 

中島:そうそうそう。そこに、まさかでしょ?マンホールからDJのディスクっていう飛躍がある。そこがね、アイデアの企画なんですね。

 

河尻:そうなんですよ。だけどこれ完成したものを作ってない人が見たら、『かっちょいいけど普通だよね』と思うかもしれない。ただ、ここにいくのが大変でしたでしょうね、作った人達。

 

中島:なかなかDJまでは思いつかへんし、でそのあとに”発見”があって”企画”があるじゃないですか。どういう風に定着していくかっていうところで、これは聞いたことあるかもしれないですけれど、”演出”ですね。
マンホールのDJまでは思いつき(=発見)、これは真上から全部同じ位置で撮ろうとかいう”演出”が入ってたり、音に合わせてやろうっていう”演出”が入ってたり、最初は普通の兄ちゃんが出てくるようにしよう!っていうのが”演出”なのね。で、マンホールをDJみたいにやろうよ、っていうのが”企画”。
ちょっと分けて考えると、アイデアが出やすいね。最後まで細かいとこまで考えなくても、『見つけたけどこれはどういう形で料理しようかな』っていうのが”企画”だよね。

 

河尻:つまり言い換えればそこはご存知かもしれないですけれど、コマーシャルっていうのはその”企画”をする人と、”演出”をする人が分業になってます。ただ皆さんは既にそういう業界で働いていて、自分は演出家です、プランナーですっていう人もいるかもわからないけど、Creative Summer Campの場合は、そこを一人でやってもいいんだよね。一人でやってもいいし、チームで分業にやってもいいし。それぞれまあ複数でやる場合も知恵を出し合いながら作っていくことができるのも、一つの魅力ですね。

加えて言うけど、誤解しちゃいけないのは、さっきのマンホールのやつでも、やっぱ”演出”に気が取られると思うんですよ。どうやって回ってるのかなとか、映像技術なんです。だけどそれよりも、『一緒にマンホールやったら面白いんじゃないか』っていう”アイデア”とか、それをもうちょっと飛躍させたところにある、『DJとそれを組み合わせよう』とか、そういう根っこの部分がないとmy Japanでは勝てない、ということは結構分かってきたかな、と。

 

中島:最終的な映像技術だけじゃなくてね、やっぱ発見とかをちょっと人が思いつかないような発想で人に見せるために、例えばこれだとマンホールの”発見”がありました。人があまり思いつかない”発見”だよね。
で、そこから『渋谷をDJにしようよ』って。まあこれからみんなが”アイデア”を考えていくときに細かい出来上がりまで考えるのは最後やと思って、まずこのマンホールを”発見”できたっていう、今までに無かった形で出す、そこの部分を”企画出し”、”アイデア出し”って言うと思うんですよね。そこがちゃんと出来るかっていうのが大きいよね

 

河尻:じゃあですね、二つ目のパターンを見ていこうと思います。これはちょっと難易度高いです。
今から見せるCMは3、4年前のやつなんですけれど、何が”アイデア”で、何が”企画”で、どの部分が”演出”になっているかっていうのを、ちょっと頭の中で気にしながら見るようにしてもらえますかね。
さっきのを見て、こっちも見ると、分かってくることもあるかもしれないね。

 


my Japan 2016 Kick Off Event〜「常識概念を取っ払ってアイデアを考えた時にこそ、クリエイターは生まれる!」〜<2>に続く)

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