4月19日(水)に、my Japan Award 2017 キックオフイベントを開催しました!
ゲストにはmy Japan Awardの審査員でおなじみ、
東北新社・中島信也さん、銀河ライター・河尻亨一さんをお呼びしました。
トークセッションでは、【事例から紐解く 良いクリエイティブアイデアの出し方】をテーマに、my Japanをよく知るこのお二方に、映像制作にあたってのアイデアの出し方や、それを企画にしていくまでのコツをお話しいただきました。
河尻亨一さん(以下、河尻) my Japanもついに8年目ですね。最近では映像を作る技術があがっていて、昔は猛者たちがやっていたことが今では誰でもできますね。myJapanでも最近は中学生の参加もありますよね。そういう時代に突入している。今日はいい映像を作る秘訣について、とっかかりみたいな話をしていけたらいいなと思っています。
中島信也さん(以下、中島) Creative Summer Camp(以下、CSC)は発表までにロケハンして企画を考えて2泊3日で本番をします。本番の最終日に現地の人たちと試写会をやるんですね。これがまあ顔から火が出るほど恥ずかしいわけですよ。だけどそれがいちばん大事。作っているときにはわからないことが、見ていただけたときに気づくことが多い。だからプロと素人の違いは、見る人の心をどれだけ想像力たくましくイメージできるかというところですね。そこ部分がただ作った映像と、プロが作った映像のおっきな違いとしてあるね。
河尻 そうですね。いまおっしゃったとおりです。作っている本人たちはこれを作りたいという企画があって、それを言葉で説明していたものと、実際僕たちに見せてくれる映像がかなり違うっていうことってよくあるんですよね。映像も情報ですから、情報を編集、整理していくことによって、伝わり方が変わります。これはCSCに参加したら実感できるはずです。
中島 そうですね。企画の段階で伝えようとしていることがあるわけなんですけど、それが伝えきれてないよって僕らは指摘します。編集しているときではまだ見る人のことがわかっていなかったりするんです。こういうことが言いたいんやろうけど、全然わからなかなったよというと「えーっ!」っていうそこの差ですね。送り出すという熱意が勝ちすぎて知らん人がみたらさっぱりわからんものになってる。これは、僕らプロでもやってしまうけどね。
自分の親とかに見せることを想像してみるといいですね。これはわからんやろなとか、でもそれを無視してしまうんですね。というのは、わかってもらえなくても、俺らが分かればいいやと思ってしまうからです。その俺らが本当にわかってるかも謎だけどね。だからクリエイディブのベースになるのは、見る人をどう意識するか、読む人をどう意識するかっていうことですよね。
アイデアがある映像は心に残る
河尻 簡単にいうと、俺ってかっこいいオーラ強すぎる人ってあんまかっこよくないですよね。
中島 そうそう(笑)
河尻 お茶目な自分や、ちょっと間抜けな自分を含めて伝えられる人がかっこいいし、かわいいっていうこともあるんです。映像にはそういう人間と同じようなところがありますね。
言葉で言っていてもピンとこないと思うから、my Japan Award 2016のグランプリの動画を見ましょうか。これぐらいできたら優勝なんだなっていうことがイメージしてもらえれば。この2つの映像の何がアイデアか考えながら見てください。
岡山県倉敷市 ずっと着ていたい制服を作る町
徳島県神山町 スケてるっていいな
河尻 まずは倉敷の方から、これは実際には制服を着ていないような人が、普通に着ているってギャップが面白いんですよね。ここにアイデア含まれてますね。
中島 そうですね。アイデアがないものって世の中に本当にいっぱいあるんですよ。「制服の街」を伝えるときに普通は、街の風景を写してここでは日本中の制服の何割が作られていますって言ってしまいがちですね。そうなると、見ている人はああそうですかとなって、なにもひっかかってきません。言いたいことは言えていて正しくはあるんだけれども、それはアイデアがないんですよね。
この作品にアイデアがあるのは、ずっと着れる制服という、制服の持ち味とは本来違うところを切り口にしていることです。新学期に新しい制服を買うのが普通だけど、ずっと着たくなるほどいい制服を作っているということを伝えています。もう着ないと思っていたけど、そういう考え方もあるよねっていう切り口が入っていることで、見ている人はそこで面白いとを感じるんですよ。だから見ている人はこの30秒間みて損はしなかったわけね。アイデアがあるだけでずっと心に残るわけですね。
河尻 神山町のほうはどうですか。
中島 神山の方はそのまんまなんですけど、透ける透けるって男の子たちがはしゃいでいることで、洋服が透けてるんだろうなと想像しますよね。ああなんだかえっちなビデオがはじまったかなって思ったら、女の子が行ってしまって、水が透けているのがいい、えっそっちか!と、え、そっちかって言わせる、その部分がアイデアですね。普通だったら水が綺麗な神山町あなたもゆっくりと時間を過ごして見ませんか、いいな神山町とかいっても、あそうって言う感じで、そんなものが今世間にはごまんとありますね。
河尻 水が綺麗だというところはいっぱいありますからね。その中でどうやってその綺麗さを見せていくかってことですよね。今中島さんが切り口っておっしゃって、アイデアっていうと抽象的だけど、切り口っていうと腑に落ちて。その切り口探しからまず始めるのがマイジャパンのやること、ミッションなんですよね。
中島 僕は、宮崎県小林市のCMがアイデアの塊だと思うんです。今の映像を企画したのは、去年のマイジャパンの先生をしてくれた村田さんです。
市の紹介ビデオってごまんとあって、大体が名物を紹介するだけなんですけど、この映像は全然ちがいますね。
宮崎県小林市 移住促進PRムービー “ンダモシタン小林”
中島 これは名作です。フランス語ではなく現地の方言で話していたっていうオチ。日本のことをフランス人が紹介しているっていうのも1つのアイデアなんだけど、なんと現地の方言を話していたということでどっひゃー!とくる。これは相当心に残りますね。西諸弁ってフランス語に似てるなっていう発見が1つの切り口で、これを小林市はいいところといっても何にも残らない。アイデアがある切り口をみつけること、人が発想しないことを探さないとだめだね。
アイデアは企みから生まれる
河尻 中島校長に聞きたいんですけど、どうやったらアイデアってでてくるんですかね。マイジャパンで賞とか撮った作品をみても意外と大したことないやんって思うこともあるじゃないですか。でも、ぼくら一緒にキャンプの参加者と作ってるからわかるんですけど、そこに至るまでがすっごく大変ですよね。観るは簡単だけど、実際に作ったらどんだけのもんやっておもうじゃないですか。いいアイデアっていうのはどういうところからでてくるのかなって。
中島 トンチに近いと思うんですよね。例えば屏風の虎を取ってこいって言われるけど虎をとってくることはできないですよね。でもできますって言う。CMや広告も実はそうですね。
河尻 ああ、なるほど。
中島 すごい高度な話なんですけど、元々無理っていうところに立てるかなんだよね。もともとこれを普通に言っただけじゃ誰も何とも思わない、っていうところに立った時に初めて、じゃあどうしようかと考えることができる。元々普通に綺麗な風景だし美味しい食べ物だけど、これを普通に言っただけじゃ、何にも残らないし伝わらないぞって思えるかどうかです。まずね。
河尻 どれだけ考えるかっていうことなんですかね。
中島 考えるっていうこともあるんだけど、論理的に考えるだけじゃないですよね。
河尻 ああ、そこを知りたいですね。
中島 発明とか発見近いようなものなんですけど、ランプがつく時がありますよね。ああ!これだ!っていうふうに思えるときです。そういう発明発見をしていくためには普通に言ったんじゃダメだ、風景をそのまま綺麗に撮ってもダメか、美味しそうに食べ物撮ってもダメか、っていうふうに考える。そして突拍子もない、何かを見つけていくことだね。
河尻 なるほど、それを見つけられた人は映像も作りやすい。
中島 そんなに映像が上等なものじゃなくても、アイデアさえあれば結構人の心は打てると思うんですよね。だからそれを発見するのがどれだけ大事か。あとは若干あまのじゃくじゃないとだめですよね。このアイデアは中島先生ぜったい喜んでくれるぞうひょひょうひょ~っていう企み。
河尻 企み、企画の企ですね。
中島 だれかを絶対に喜ばせてやるぞっていう、ちょっと腹黒な企みはアイデアをだすときには必要だね。
河尻 その企みは言い換えると、サービス精神ですね。
中島 そういうことです。楽しませてあげよう。喜んでもらおうということですね。誰かを喜ばせる企みを持つという自分の心持ちですね。喜ばせなきゃあかんぞっていうね。僕はこれを「喜んでもらイズム」っていいってます。
河尻 そう、それを校長はいつも言ってますね。myJapan(の作品)でもよくあるのは、映像はとっても綺麗でいい感じに作られているんだけど、アイデアとか喜ばせようとかサービス精神がないものですね。映像は素晴らしいけど、そういう作品はなかなか決勝準決勝までは進んで行かない傾向にありますね。なぜかというと、そういう作品を見てもあんまり印象に残らない。YouTubeでたくさん映像が見られる今の世の中では特に意識するべきですね。
中島 話を聞いていて、なんだかできるような気がしてきたでしょ。とくにCSCは現地に行ってネタを拾ってくるので、発見はすごく大事ですね。自分たちのオリジナルな発見、切り口の発見が大事ですね。
河尻 自分が面白いと思うことをやったらそれがまずサービス精神になってます。あんまり難しく考えなくていいんだけど、今回のテーマではそういうことになりますね。
トークセッションは以上になります。アイデアの出し方について貴重なお話を伺うことができました。
次回はCSC参加者による座談会の様子をお届けします!
お話の中でもあった、Creative Summer Campは現在申込期間です!少しでも興味を持った方、自分で映像を作ってみたい方はぜひチェックしてみてください。
今年度の開催地域は、福島県南相馬市、福島県広野町、福島県川内村のオール福島です!
この機会にぜひお申し込みください!詳細・お申し込みはこちらです。http://my-jpn.com/csc/
Text:Arai Yukina