(▶️前回の記事『CSC2016ついに終幕!渋谷スクランブル交差点で放映する作品が決定!』)
Creative Summer Camp 2016の開催地域のひとつ、徳島県神山町。
数年前まで過疎地帯だったこの町は、近年、『ワーク・イン・レジデンス(※)』という取り組みが始まったことにより、神山町民が町のために必要な働き手を逆指名したり、IT関係のサテライトオフィスが山奥にできるなど、新しい人が集まる町となりました。(※詳しくは、NPO法人グリーンバレーの活動をご覧ください。)
”移住促進”の成功例として地方系メディアで名を上げるこの神山町で、CSCを開催しようとした理由。
それは、「神山町が今の姿になるまでには長い歴史があり、メディアにも取り上げられていない魅力がたくさんある。それらを映像にして、”神山町での暮らしが、外国人や日本人にとって、都会よりも少し良いものである”と誰もが感じられるように、神山町に潜む魅力を再定義してほしい!」という現地コーディネーター(木内康勝さん)の言葉があったからです。
実際にキャンプの様子がわかる映像はこちら!
私たち一般社団法人my Japanは、”若手クリエイターの育成”を目的として、様々な地域にクリエイターを送り込んできました。このプログラムの魅力的なポイントは大きく分けて3つあります。
1つ目は、地域と近い距離感で映像を制作できること。
選定した地域にはコーディネーターが付き、参加者を受け入れる体制を整えてくれています。そのため、現地でのホームステイや移動手段の調整が可能となり、クリエイターが思う存分にその地域を知ることができるのです。
また、メディアとは一切関わらないリアルな体験をしてその地域に浸ることができ、より企画のイメージが湧きやすくなるのです。
2つ目は、クリエイティブの一線で活躍する講師陣にフィードバックしてもらえること。
地域に感情移入し、CM企画の行く末に迷うクリエイターに対し、客観的な視点かつ本質を問うワークショップがロケハン後に設けられています。中島信也さん(東北新社)、須田和博さん(博報堂)、河尻亨一さん(銀河ライター)に1日かけてフィードバックして頂く時間はかなり有意義なものになります。また制作キャンプ本番にも地域に同行していただき、夜通しフィードバックをしてくださいます。
3つ目は、作品を評価される機会が多く設けられていること。
2泊3日のキャンプで撮影編集した作品は、3日目に現地で発表会を行います。そこでは現地審査員の他に住民の方にも審査に協力してもらい、”現地特別賞”を用意しています。お世話になった現地の人々に恩返すような気持ちで作品を披露するクリエイターがほとんどです。
そして本番の9月末。この時までに完成版を仕上げ、豪華面々に審査をして頂き、全地域内での最優秀賞が決まります。今年は、上記4名に加え、福里真一さん(ワンスカイ)、木村健太郎さん(博報堂ケトル)、箭内道彦さん(すき あいたい ヤバい)に協力していただきました。
また、上記審査員にもお越しいただく、12月開催のmy Japan Awardでは、毎年CSCの複数作品が全国のCMを勝ち退けて受賞しています。ここで若手クリエイターの育成が実現するプロセスとなっています。
CSCは前例のない映像制作キャンププログラムとして今年で3年目を迎えますが、クリエイターにとって魅力的なポイントを押さえ、かつ自治体としてもPR映像に起用できるなど多くのメリットが重なり、注目をされているプログラムです。
そんな中で神山町に訪れた16名のクリエイター。
広告代理店勤務の社会人もいれば、大学で映像制作を学ぶ学生もいました。
幅広い若手クリエイターが、「神山町に潜む魅力を再定義し、日本人も外国人も移住したくなるようなCM」という斬新なテーマで映像を作りました。以下、受賞作品とそれの審査コメントも合わせてご覧ください!
【神山町コース全5作品】
現地特別賞、神山町優秀賞(全地域内)
作品タイトル:『神山の魔法の言葉』
チーム名:アーケオロジーズ(添野友洋、浅田裕史、堀江紅葉)
浅田:「チーム内の共通意識は、地元の人に”良いな”と思ってもらえるCMを作ること。そしてこのCMを見てクスッと笑えて、神山町に少しでも興味を持ってもらえればと思って作りました!」
『神山町現地特別賞』
‥チームメンバーが言ったこのコメント通り、現地発表会では住民から最も票を集めたCMとして評価されました。企画の種は、「神山町にはどうやらソロモンの秘宝の伝説があるらしい」という話をホームステイで聞いた事から。
斬新な発想と、それを実行する行動力で、誰もがインパクトを覚えるCMに仕上がりました。
『神山町優秀賞(全地域内)』
‥審査コメント
木村健太郎:「得体の知れない不可解なパワーがあります。CMは、CMで課題をすべて解決できる事なんてマレです。今回の場合、CM一本で移住したくなるなんて到底難しい。それでもこのCMは、”この変な町についてもっと知りたい”という気持ちにさせることに成功しています!”この宝箱って何が入ってたんだ!?”というような残尿感が好きです(笑)」
また他の審査員も、「この作品にはエネルギーとパワーを感じる。」「ソロモンって何やねん!って突っ込みたくなるのが良いね。」「引っ張られるよね、このリズム。」と口にしながらクスッと笑う姿がみえました。
作品タイトル:『移住面接』
チーム名:ゴッド・マウンテン(山田将平、田中里穂、吉田櫻子)
‥審査コメント
木村健太郎:「ドアを開けたら現地だったという企画は面白い!せっかくみんなが入り込みやすい設定を見つけたのに、河原で面接するだけだったのがちょっと残念。セリフやオチにもう一工夫あると良かったなと思いました。」
このチームは、現地のキャスト数が最も多いチームでした。そして現地での評価も高く、あともう一踏ん張りで現地特別賞を逃したチームです。神山町に移住する人たちが「新しいことにチャレンジしたい!」という気持ちを持って入るだろうというところに目をつけ、「やっちゃえる町」というコピーで映像を締めています。
現地に同行した河尻さんも、「現地で制作した映像より確実に良くなった!」と仕上げ作品をかなり賞賛していました。
作品タイトル:『どんとこい、十人十色』
チーム名:アイアム(石川友紀乃、松田莉奈、AN HUIXIN)
‥審査コメント
木村健太郎:「現地の人物のトークや、笑顔の切り取り方がうまい!実際に魅力的な人がいっぱいいるいい街なんだろうなと思えました。ただ、企画が順目すぎて他でもよく見るような観光協会映像になってしまったのが惜しいね。」
他の地域の参加者からは、「この映像すごく綺麗で見やすくて大好きです!」という声も聞こえるほど、キャストの引き出し方と編集が優れていました。細かいロゴや色彩にも凝っていて、女の子チームらしい柔らかなCMになりました。現地審査員からも、「あともうひと練り欲しかった!」という指摘もありましたが、このCMを見て神山町の人たちに会いに行きたい!と思った人はたくさんいると思います!
作品タイトル:『楽しんだらええんちゃうん?』
チーム名:ごんざれす(芦田和歌子、加藤春佳、飯田雄平)
‥審査コメント
木村健太郎:「実際にやった突撃ドキュメンタリーの強さがあります!CMは大抵リアルに見せたフェイクです。本来、”リアル” は “リアル風” よりも強いもの。その強さがきっとあったはずなんだけど、出来上がった映像を1回見ただけじゃそれがイマイチ伝わってこなかったのが残念!」
このチームは撮影本番で急遽、神山町でイベントを開催。自分たちで現地の人にビラ配りをし、体育館でイベントを開催した様子を映像にしました。ドキュメンタリーチックなCM作品はこれまでCSCにはなかったのでかなり新鮮でしたが、ドローンを使用するなど抜群のテクニックで映像におさめていました。
河尻さんは、「このチームは朝になりそうな時まで色々迷っていたんやけど、結果うまくまとめることができて良かった!」と現地で言っていました。他の審査員も今までにないテイストの作品に興味関心を持って審査していました。
現地最優秀賞、最優秀賞(全地域内)
作品タイトル:『スケてるっていいな。』
チーム名:家系シュークリームメーカー(中川文華、菅 俊樹、鳴海輝孝、三枝雄真)
菅:「僕らのチームは4人で意見の対立などあったのですが無事に賞を取れて良かったです!」
『神山町現地最優秀賞』
‥神山町の観光スポットでもある、”雨乞いの滝”を舞台に、”透き通る水の綺麗さ”を表現した作品として審査員から高評価されました。他のチームが着目した”やったらええんちゃう”をあえて題材にせず、神山町の真の魅力は”水”ということを前面的に押し出したのが評価されました。しかし須田さんは「水が綺麗な町の競合は日本中に沢山あるから神山町らしさが欲しかった」という厳しい意見も放っていました。
『最優秀賞(全地域内)』
‥審査コメント
木村健太郎:「企画は上手いし映像も一番綺麗。水のキラキラは美しいしお姉さんもいい具合にセクシー。セリフも演出も素晴らしいです!お題が観光誘致だったらこれが一番だと思ったのだけど、”移住したくなる”というお題には答えきれていないかなと思って優秀賞にはしませんでした。」
中島信也:「このCMを見たら、”神山町ってちょっとエッチな女の子がいる町なのかも”ってそそられて興味は湧くよね!」
須田和博:「あえて他のチームが着目した”やったらええんちゃう”をテーマにしなかったチームとして評価はできますね。」
審査員はそれぞれ違う作品に1位を投票していましたが、このチームは最終審査員5名全員が順位を問わずに評価した作品として見事最優秀賞を受賞しました。他の地域合わせて19作品の激戦を勝ち抜いて、最優秀賞を獲った喜びは大きかったと思います。
Creative Summer Camp 神山町での撮影は天候にも恵まれ、多くの人に協力していただき実現できました。
徳島県神山町に入ると、『やったらええんちゃう』という言葉で、やる気のある若者を受け入れてくれました。その風土は今に作られたものではなく、お遍路文化にまで遡る昔からの歴史があったからこそです。
自分で何かやりたい事があって移住してきた人に対し、神山町の人は寛大に受け入れすぎず、でも目は離さない。そんな空気がありました。背中を押されるその言葉は、まるで魔法のようにも感じられます。
それを実際にCSCで体験したからこそ、4/5チームが『やったらええんちゃう』という風土に神山町の最大の魅力を感じ、各々切り口が違う映像として表現したのではないでしょうか。
改めて、今回「CSC in 神山町」に協力してくださった現地関係者の皆様ありがとうございました!そして神山町コースのクリエイターの皆さんもお疲れ様でした。また12月11日に開催されるmy Japan Award FINALの舞台でお会いできることを楽しみにしております!
次回は佐渡島コースと田村市コースの様子もお伝えします!お楽しみに!!
Text by ERIKA ABE.